オバマ大統領図書館建設計画、市全域の公共インフラとなるか

2015.01.12 16:00
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大統領図書館と言えば一般的に、大統領が任期中に関与した書類や、写真などを保管したり、奨学金を推進したりする役割を果たす場所です。ですが、そんな事実よりも実際は、地味で大理石でできた古墳のような建築物の建築デザインとしての価値のみが取り上げられてきました。そんな伝統をオバマ大統領は変えようとしているようです。


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画像:猫のソックス。クリントン大統領図書館所蔵


2016年退任予定のオバマ大統領は、今まで一般業務で使用していたファックスを電子メールに移行し、以前はメディアチームが一晩かけて収集していた翌日の朝のニュースも、デジタルチームを駆使し、全てオンラインで収集できるようにしました。また、大統領への連絡もデジタル化され、(デジタル化について、共和党は法律違反ではないか?と反論していましたが) 各省庁の業務や記録もオンラインへ移行、こうしてオバマ大統領は長い間保たれてきたホワイトハウスの運営に変化をもたらした事は言うまでもありません。

この結果、オバマ大統領は歴代の大統領に比べ、紙を使用した書類の数が著しく少なく、もちろん物質的な公文書も存在しますが、ジョンソン大統領図書館に保存してある分厚く、赤と金で豪華に製本してあるような大量の公文書は存在しないのです。


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そういう訳で、オバマ大統領の公文書はデジタルデータとして保管される可能性が大きいでしょう。このデジタル時代に構築されるオバマ大統領図書館は、一体どんなものになるのでしょうか?


デザイン

現在、イリノイ大学シカゴ校、シカゴ大学、コロンビア大学、ハワイ大学の4機関に提案依頼書が発行されました。オバマ大統領図書館は、ただの図書館ではなく、2017年以降オバマ大統領が主導権を持ち、学位習得が可能な学術機関。これは、全く新しいアイディアではありませんが、明らかにオバマ大統領図書館建設地近辺に経済効果と、文化的発展を期待できるでしょう。


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いくつかの図書館建設についての企画書はすでに一般公開されています。とは言え、かなり初期段階のものではありますが。中でも、イリノイ大学の企画書には複合施設の建築を縮小し、新しい市電を含んだ市全域のインフラ構築という、飛び抜けた企画が書かれています。


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この企画には、美術館と図書館を含むコミュニティーセンターの建設、西側にあるノースローウンデール地区への市電の建設、市電の建設に関しては、シカゴ大学の企画が通った際、市は必ず建設すると公約しています。

また、ミシガン湖から東へ5マイル(約8km)にあるシカゴ大学の構内に学術機関とビジターセンターの建設、そしてこの二つの建物の間の市内で一番交通量の多い通りに“生き生きとしたグリーンベルト”のような歩道と自転車道を含む高架橋を建設。


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まだ建設物も何も無い計画の段階で、議会の承認を得るのには時間がかかりそうですが、この企画は、本当に素晴らしいものなので、実現すればいいのにと思っています。(他の企画ももちろん良いものばかりなのですが)大統領図書館の建設には莫大な予算を必要とします。1つの図書館の建設だけにそのお金をつかうのではなく、大統領が彼のキャリアの第一歩を踏んだシカゴ市全域に有意義に使うことに意味があるのではないのでしょうか?

2014年初めに、建築評論家のWitold Rybczynskiは、“資料館、美術館、殿堂が混ぜ合わったもの”と、揶揄しています。オバマ大統領図書館は規模を小さく、むしろ大統領図書館などを建設せず、今後の大統領のお手本となって欲しいものです。

シカゴ大の企画は決して小さな物ではありません。どの大統領図書館よりも遥かに大きな企画です。市全域のインフラの建設で一人でも多くの国民が恩恵を受ける事は、殿堂施設を1つ建設することよりも、多くの意味があるでしょう。


image by イリノイ大学シカゴ校, Dave Wilson, Jaime Puente, Sunfell

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文
(Chiemi)

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  • 懸け橋(ブリッジ)(上): オバマとブラック・ポリティクス
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