「経歴ほしければ無給で働け」 就活生を搾取する韓国企業

韓国で横行する「情熱ペイ」とは
資格取得や能力開発に全くプラスにならないコンビニまでもが追随

「経歴ほしければ無給で働け」 就活生を搾取する韓国企業

 「金もうけのためにコンビニで勤務するのは何か違うと思う。一生懸命に働く人にはそれなりの報酬を差し上げます」

 先月ある求人サイトに掲載されたコンビニのアルバイト募集の広告が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じて広がり、就職活動中の学生たちの怒りを買っている。この広告には「電話では時給を教えられない」「金もうけのためにコンビニで働くのは何か違うと思う」などの文句が含まれていた。ネットユーザーたちは「コンビニのバイトは金を稼ぐためにするのであって、それ以外にどんな理由があるというのか」「今ではコンビニのオーナーまでもがこんな文章を書くようになったのか」とコンビニのオーナーを批判した。しかし募集広告を出したコンビニがどこにあるのか、どんなフランチャイズなのかは一切確認できなかった。この募集広告が掲載された求人サイトの関係者は「現在では原文がどこにあるのか分からない状態だ。批判を浴びたため自ら消した可能性があるが、応募者が現れて募集が締め切られた可能性もある」と話した。

 この広告が論議を呼んだことで、各種のポータルサイトでは「コンビニ情熱ペイ」という言葉が検索ワードの上位にのし上がった。情熱と「ペイ(給与)」を合わせた言葉で、やりたいことをする機会を与えてやったという口実で就職活動中の学生を搾取する行為を意味する新造語だ。一部の企業や公共機関がインターンシップの学生を採用し、無給あるいはすずめの涙ほどの活動費だけを与えて正規社員のように使いながら「あなたの情熱を買う」といった大げさな大義名分を掲げることを皮肉ったものだ。ところで、経歴やスペック(資格や英語能力など)に何らプラスにならないコンビニのバイトでさえ、「情熱ペイ」の形で採用される現実に、若者たちが怒りを覚えたのだ。コンビニでバイトをしているヨさん(26)は「そんなコンビニのバイトに応募した人がいたのかどうかは知らないが、広告を掲載したオーナーに『金もうけのためにコンビニを経営するのは何か違うと思う』と言ってやりたい」と皮肉った。

 就職活動中の学生たちはこれまで「スペックの奴隷」「インターンシップの奴隷」「無給奴隷」といった言葉で企業の搾取に対する怒りをあらわにしてきた。20代の絶望感を表すこのような自虐的な用語に「情熱ペイ」が加えられたのは2011年のことだ。やりたいことをする代わりに「少ない」給与で我慢させられる青年たちをインタビューした本に出てくる「情熱労働」という言葉を、就職活動中の学生たちが風刺的に変形させたのだ。

 「情熱ペイ」が話題となっているにもかかわらず、大多数の就職活動中の学生はそうした働き口でも志願するほかないのが現実だ。最近ある求人サイトが求職者735人を対象に「低賃金、または無給のインターンシップでも志願するか」と質問したところ、求職者の27.2%が「そのつもりだ」と回答した。昨夏8週間にわたってある食品会社で大学生アルバイトとして働き20万ウォン(約2万2000円)をもらったというキムさん(23)は「毎週会議に参加してマーケティング実習という名目でブログなどを通じて製品の広告をアップした。企業の広報活動にほとんど無給で動員されたが、履歴書の経歴を1行増やし、人脈を作っていくためには、志願するほかなかった」と悲しい現実に触れた。2013年下半期に有名国際救護団体でインターンシップとして働いたパクさん(28)は「1カ月に30万ウォン(約3万3000円)をもらって一週間に40、50時間ずつ働いた。(この団体は)『所定の給与』を与えるとしていた。給与が少ないことに不満があるといえばあるが、(就職のために)仕方なく志願した」と話した。

 こうした現状について、高麗大学社会学科のイ・ミョンジン教授は「厳しい就職難の中で諦めずに何か一つでもやってみようと努力する青年層の情熱を一部の企業が利用している。正当な対価を支払わずに労働力を利用しようとする行動は、非正常的な韓国社会の側面」と説明した。

ユン・ヒョンジュン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 「経歴ほしければ無給で働け」 就活生を搾取する韓国企業

right

関連ニュース