皮下脂肪は厄介者ではない、強力な「抗菌ペプチド」を作る新事実が判明、サイエンス誌
「カテリシジン」、感染予防に大事な役割を担う

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Sebastian Ritter)

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Sebastian Ritter)

 「厄介者」と見られがちな皮下脂肪が、細菌を殺す効果を持つ「抗菌ペプチド」を作っていると新たに判明した。

 米国のカリフォルニア大学の研究グループが、国際的な有力科学誌サイエンス誌の2015年1月2日号で報告したものだ。

 感染に対抗する仕組みに新参者

 人間の体の感染に対する防御は、複雑で複層的に成り立っている。

 最終的には、好中球や単球といった白血球が登場し、「貪食細胞」と呼ばれるくらいで、文字通り獲物である病原体をむさぼり食う。

 こうした貪食細胞が到着する前に緊急対応を行うのが、感染場所にいる上皮細胞、マスト細胞、白血球である。

 このたび、さらに皮膚の脂肪組織が加わっていると判明した。

高レベルの細菌を殺す効果

 皮膚の脂肪細胞は、カテリシジン抗菌ペプチド(CAMP)を作っていた。

 抗菌ペプチド(AMP)は、自然免疫反応によって、侵略してくる細菌やウイルスなどの病原体を直接殺すため用いられる分子。CAMPは、その中でも高レベルの抗菌ペプチドである。

感染すると脂肪組織が増える

 研究はマウスを使った実験で、マウスを黄色ブドウ球菌に感染させ、感染に対して皮下脂肪がどのような役割を果たしているかを観察するもの。

 感染場所では数時間後に脂肪細胞の数と大きさが顕著に増加した。

 そして、脂肪細胞がカテリシジン抗菌ペプチドを生成している事実を突き止めた。

 さらに、人間の脂肪細胞もやはりカテリシジンを作り出しており、マウスと同様の免疫反応があると確認している。

もろ刃の剣、多すぎても少なすぎても良くない

 研究グループによれば、CAMPはもろ刃の剣であり、少なすぎても多すぎても良くないという。

 少なすぎるとアトピー性湿疹などを起こし、多すぎると自己免疫症や、狼瘡や乾癬などの炎症疾患を起こす原因となる。

 肥満では、正常な体重よりも血液中にCAMPの量が多いことも観察した。

 研究グループは、糖尿病や肥満などへの臨床的応用の可能性を想定する。

 脂肪の思わぬ効果が注目されそうだ。

 

文献情報

Zhang LJ et al.Innate immunity. Dermal adipocytes protect against invasive Staphylococcus aureus skin infection.Science. 2015;347: 67-71.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25554785

 

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