「失敗をどうやって成功の糧にしていくのか?」ーー 歴戦の経営者たちが語った、失敗力の身に付け方


 起業家の華々しい成功の裏には、数々の失敗や苦難がある。その失敗談にこそ学ぶべきものが多くあるが、耳にする機会は少ない。新経済連盟主催で行われた「失敗力カンファレンス」では、常人では想像もつかない数々の苦難を乗り越えてきた経営者が一堂に会した。

 「失敗力の身に付け方」というセッションでは、株式会社サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏、株式会社オウケイウェイヴ代表取締役の兼元謙任氏、ホッピービバレッジ株式会社代表取締役の石渡美奈氏という歴戦の経営者が「個人」と「組織」の側面から失敗力の身に付け方を語ってくれた。モデレーターは、慶應義塾大学大学院特任教授の岩本隆氏。

失敗がなければ、自分の成長もない

 「失敗は成功のもと」という言葉があるように、失敗にこそ学びは多いものだ。しかしながら、失敗のリスクを覚悟して一歩踏み出すことのできる人は数少ない。このセッションに登壇した3名の経営者は数々の失敗を自分の血肉とし、成功を手にしてきた。


 旧態依然の会社が続々と経営不振に喘ぐ中、5年間で年商を3倍にまで伸ばした創業110年目のホッピービバレッジ。その三代目社長を務める石渡氏は、全社員から辞表を突きつけられるなど、成長の裏には数え切れないほどの失敗があったそうだ。

 そうした失敗の中で、石渡氏が大事にするようになったのは「失敗がなければ修行にならない」という考え方。「失敗は必ず降ってくるもので、避けることはできない。むしろ失敗がなければ、自分自身の修行にならないので成長もない」と語る。

恥をかくのが恐い……といった余計なプライドを捨てる


 藤田氏は、経営が順調に進んでいる今も売上の7割をスマホに投資する、という大胆な意思決定にも臆することなく挑戦している。そんな意思決定の裏には、20代の頃に経験した「失敗」が活かされているそうだ。

 「上場直後にネットバブルが崩壊し、株価があっという間に10分の1になった。1株850万が85万まで下がっていき、そのまま亡くなった人の心電図みたいにピタッと下に張り付いたんです」と藤田氏は当時を振り返り、周囲の人からかなりのバッシングを浴びせられたという。

 そんな状況をじっと耐え抜き、精神的な強さを手にしたからこそ今がある。「ある程度の失敗によってメンタルを鍛え、経験を積み、馬鹿にされることを恐れない人は、若くして成長していく」と藤田氏。恥をかく、馬鹿にされるのが恐い。そういった余計なプライドを捨てることが「失敗力」を身につけることに繋がっていくのだろう。

失敗を恐れない文化を組織にどう醸成するか?


 失敗を恐れていては成長することはできない。では、組織として失敗を恐れない文化をどのように醸成していくべきなのだろうか? 石渡氏が驚くべきことを口にした。何と、ホッピービバレッジにはそもそも「失敗」という言葉自体が存在しないのだという。

 一度でも「失敗した」と思うと、怖気付いてしまい次から同じようにチャレンジできなくなってしまうため、「失敗」という言葉は使わないのだ。その文化が社員の自発的な行動を生み出し、ホッピービバレッジの成長の原動力となっている。


 一方で、オウケイウェイヴの兼元氏は失敗を積極的に共有し合うようにしているそうだ。Q&Aサイト「OKWave」の社内版のようなシステムを作り、社員同士が失敗例、失敗をどう乗り越えたのかを共有している。そういったノウハウを蓄積していくことで、社員が失敗を恐れず挑戦していけるようにしているそう。


 失敗は誰にとっても恐いもの。多くの人にとって、一歩踏み出す際の足かせとなっているだろうが、彼らのように少し見方を変えるだけで「失敗」を自分にとっての財産にしていくことができる。数々の失敗を経験し、それを成功へと昇華させてきた起業家の言葉は多くの人の背中を押すはず。

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「当事者」にならなければ世界は変わらない ーー 2020年に向けて、起業家は何を思う【前編】


 東京の地から世界を変えるスタートアップを輩出するプログラム「TOKYO START UP GATE WAY」のコンテスト部門における決勝大会「THE FINAL」が11月16日(日)に開催された。

 このイベントでは、予選を勝ち抜いた448名のエントリー者の中から選抜されたファイナリスト10名がピッチを行ったほか、審査員や現役の起業家によるパネルディスカッションが行われた。ここでは、2名の起業家が語った、パネルディスカッションの内容をお伝えしていく。

登壇者

freee株式会社 代表取締役 佐々木大輔氏
READYFOR株式会社 代表取締役 米良はるか氏

モデレーター

NPO法人ETIC 事業統括ディレクター 山内 幸治氏

見出し一覧

・社会にインパクトを与える道の最短ルートが起業だった
・何かをやる「当事者」にならなければ世の中は変わっていかない
・世間のニーズではなく、自分たちの思いの方が大事

社会にインパクトを与える道の最短ルートが起業だった

山内:前半は、お二人のスタートアップについて話をお伺いした上で、これからの日本で起業家精神はどうやったら広がっていくのか、お二人が考える2020年に向けてのビジョンなどを聞いていければと思っていますので、よろしくお願いします。

 早速、佐々木さんから簡単な自己紹介も含めて、現在手がけているサービスの紹介と始めた理由をお話しいただけないでしょうか?

佐々木:佐々木と申します。僕は、全自動のクラウド会計ソフト「freee」というものを提供しています。「freee」には特徴が3つあります。1つ目の特徴がパソコンにインストールして使うという会計ソフトの常識を変え、クラウド型にして中小企業や個人事業主の人たちでもインターネットさえあれば使えるようにしたこと。

 2つ目の特徴が、専門用語が一切ない会計ソフトになっているので簿記や経理の知識ない人でも使えることができること。そして、3つ目の特徴が銀行やクレジットカードの明細データを同期させて自動で帳簿が作れるというところです。

 こうした3つの特徴を持った、新しいタイプの会計ソフトを昨年の3月にリリースし、すでに14万以上の事業所の方々に利用していただいてます。この事業をやっていく上で、会社組織も急激に成長していっているため、資金的にも海外のVC(ベンチャーキャピタル)などを含めて、すでに17億円ぐらい調達してやっています。

「freee」は個人的な問題意識から始めようと思った

佐々木:このビジネスを始めるきっかけとなったのは、「freee」という会社を立ち上げる2つ前の仕事でベンチャー企業のCFO(Chief Finance Officer)として財務の仕事をしていたことですね。

 当時は20名くらいの会社だったので、財務の仕事自体は資金調達をしている時以外、ほとんどありませんでした。

 そうすると、どれだけ自分もビジネスに付加価値を与えられるようなことができるかが重要で、そうではない経理の部分は、何としても最小コストで上手く回せるようにしようと思ったんです。

 ただ、当時使っていたソフトウェアだと「実現可能性が低い……」という悩みがあり、最終的にはそれが問題意識の発端になったのですが、その頃は自分でソフトを作るなんて難しいと思って諦めました。

 そのあと、Googleという会社に入り、社内は全部クラウドのツールしか使わないという環境で仕事をするようになりました。さらに、中小企業向けのマーケティングという、中小企業の方にインターネットの素晴らしさを伝えていくことをやろうとしていたんですね。

 そこで色んな国の中小企業のインターネットの利用状況やインターネット関連のツールの利用状況を一生懸命調べたんですけど、日本だけどうしても中小企業のテクノロジー活用が遅れていて、そこにも問題意識を持ち始めました。

 また、「前の会社で困っていた会計ソフトって、あの後どうなったんだろう?」と思い、調べてみたのですが全く進化していなかった。そんな状況に「問題意識を持ったんだったら、とりあえず自分でやってみよう」ということで、独学でまずプログラミングの勉強を始め、この「freee」というプロダクトを作り始めたという感じですね。

戻ろうと思えば、大企業の世界にはいつでも戻れる

山内:ありがとうございます。佐々木さんのことは、佐々木さんが大学生の頃、私たち「ETIC」のインターンのプログラムに参加いただいていたので知っていました。何となく経歴を見ても、起業するということを意識していたタイプには感じなかったのですが、自分でやろうと思ったポイントはどこにあったんですか?

佐々木:理由の一つは、日本の中小企業マーケットを見た時に幾つかの問題を感じたことにあります。それは、テクノロジーの浸透度が低いこと、また開業率や起業する人の割合が少ないといったことです。

 そんな問題を解決しようとした時、「サポートをしよう」といったことは色々言えるのですが、それよりもまず自分でやってみることが重要だと思い、起業しようと思いました。

 もう一つの理由は、自分自身、会計などに対する問題意識はすごく持っていましたし、また、中小企業のテクノロジー化も進めていかなければいけないという問題意識も強く持っている中で、この掛け合わせを持っている人は世の中にそんなにいないだろうなと。

 であれば、挑戦してみるということが世の中に対する一つの貢献になるのではないかと思い、やり始めたのが経緯ですね。

山内:Googleという環境の中、ビジネスで世界を相手にどんどん勝負していく。そんな生き方もあったと思うのですが、そういったことは考えなかったのですか?

佐々木:そういうのも考えつつではあったのですが、「そっちだと時間がかかるな」という思いはありましたね。自分が本当にインパクトを与えるようになるまでには、まだまだ時間がかかるなと。

 しかし、起業というアプローチを取ることによって、世の中に与えられるインパクトの方がもしかしたら大きいのではないかと思い、であればやってみる価値は十分にあると思ったんです。

 あと、大企業の世界って戻りたかったら、いつでも戻れるかなという思いもありました。最終的に大企業に戻ったとしても、大して遠回りにならないだろうと。Googleという会社にいると、「起業に失敗して戻ってきました」というのは普通にいるんですよ。そういった意味では、起業することは何かのメインストリームから外れることだと思いませんでしたね。

山内:ありがとうございます。社会にインパクトを与える道を最短で考えた時に、起業という選択肢が自分の中でピンと来た、ハマったというところなんですね。

佐々木:そうですね。ちょうどいいタイミングだったんじゃないかと。

山内:分かりました、ありがとうございます。次に米良さんも簡単に自己紹介をお願いします。

何かをやる「当事者」にならなければ世の中は変わっていかない


米良:初めまして、米良はるかと申します。私はクラウドファンディングという、インターネット上で少額の資金を多くの人から集める資金調達の仕組みを、「READYFOR?」というサービスを通じて提供しています。

 2011年の3月に「READYFOR?」というサービスを、日本初のクラウドファンディングという形で始めたのですが、始めたきっかけは、大学4年生ぐらいの時のパラリンピックのスキーチームの荒井監督との出会いです。

起業しようと考えたことはなかった

米良:私は明確なビジョンを持っていたり、起業しようと考えたりしたことがなかったんです。そんな時に、荒井監督からパラリンピックで何度も優勝しているような強いチームにもかかわらず、お金がなく、練習環境の整備などが難しいという話を聞きました。

 それまで私が生きてきた環境には、何かを創る、クリエイティブなものを発信していくという人たちが多くいたのですが、自分自身はそういったことが全く出来ず、コンプレックスを抱えながら生きていたんですね。

 でも、一歩踏み出すという勇気もなかった。そういった中で、荒井監督の話を聞いた時に「何か自分もやらなければ」と、特に理由もなく急に思いました。

 そこで、ネットがあればこういった悩みを抱える人の思いを発信することができ、その思いに賛同した人が10円でも100円でも出していけば、悩みを解決できるのではないかと考え、荒井監督のチームに対して100万円を集める活動を始めました。

 3ヶ月間、地道に活動を続けていった結果、100万円を集めることができ、そのチームは金メダル1個、銀メダル2個という快挙を成し遂げたんです。

 私自身がお金を集めたから、チームが優勝したわけではないことは分かっているのですが、色んなことをやっている人たちに対して、まずは一歩踏み出し、何かをやる当事者にならなければ世の中は変わっていかないということを勉強しました。

 本当に小さな一歩でしたが、この活動によって「何か課題があった時、私は一歩踏み出す側の人間でいたい」というふうに意識が変わりましたね。

 それから大学院に進み、ちょっとした縁からシリコンバレーへ行くことがあり、その後スタンフォード大学に留学をしてテクノロジーの勉強を始めたんです。それこそ私は経済学部出身だったので、プログラミングとかは全然出来なかったのですが、自分で何かモノを作れるようになりたいと思い、スタンフォードでプログラミングの勉強を始めました。

 そういった中で、荒井監督のような思いを持ち、社会の中で活躍しようとしている人たちを応援できるような仕組みを作りたいと思った時に、2009年頃から新しい資金調達の方法として「クラウドファンディング」がアメリカを中心に広がっているのを知ったんですね。

 一方で、日本国内を見渡してみると「クラウドファンディング」というキーワードは全くなく、ネットで検索しても結果は0件だった。「これは私がやるしかない」という思いがビビッと来たので、日本に戻ってきて「READYFOR?」を立ち上げたという経緯になります。

 私はもともと、学生時代から親しくしていたベンチャー企業の中で1つのサービスとして「READYFOR?」という立ち上げたんです。そして、今年の7月にスピンアウトし、READYFOR株式会社でサービスを展開していくようになりました。

「何か自分からやってみよう」というカジュアルな感じでスタートした

米良:なので、「起業家になりたい」「自分が世界を変えるんだ」みたいなことを強く思って始めたわけではなく、どちらかというと「何か自分からやってみよう」というカジュアルな感じでスタートしたのが、自分の動機だったかなと思います。

山内:でも、佐々木さんとは違って、ビジネス経験を持って始めているわけじゃないですか。そういう意味での不安や難しさなどは無かったんですか?

米良:すごくありました。本当に分からないことだらけで、それこそコンサルや有名企業に入っている同級生の仲間たちが仕事の資料を見せてくれると、例えばPowerPointに何かを書くのかっていうのが仕組み化されてるんですよね。それに感動してしまって、かたや私はどうやって作ればいいのか、全部自分で考えて型を作っていかなければならない。

 そういったところなども大変でしたし、また契約書の作成も弁護士などのプロフェッショナルな方々が手伝いをしてくれるんですけど、私自身に知識がないのでたくさん本を読んだなど、最初の2年くらいはどこに向かっているのか分からないくらい地道に勉強していましたね。

世間のニーズではなく、自分たちの思いの方が大事


山内:サービスのアイデアを構想してから実際にサービスをスタートするまで、2人はどれくらいのスピードだったのですか?

佐々木:構想してからで言うと、思いついてからすぐプログラミングとか勉強して形にし始める。そういうふうに取り掛かるまで1ヶ月くらいかかり、その後一緒にやろうという仲間も見つかってので、そこから2ヶ月。だいたい3ヶ月くらいじゃないですかね。

山内:それでサービスをスタートした?

佐々木:サービスはスタート出来てないです。そこから創業して、さらに会社を辞めて作り始めると。半年ぐらいかかってサービスを作り、その間で資金調達の話もあったので、資金調達を行いつつ、そこからさらに半年ぐらいかかったという感じですね。サービスの構想から考えると、9ヶ月くらいかかりました。

山内:その間どうしてるかって、サービスを始めた人は分かるかもしれないですが、始める前の人たちって頭では考えているけれど、「どこからどう始めていいか分からない」という人も多くいると思うんですね。その9ヶ月間って、どんな感じだったのでしょうか? もしくサービスを始めようとしている人たちに何かアドバイスがあればお願いします。

佐々木:最初は「最悪、自分一人でもいいから作ってみよう」と思ってたんですね。だから、何かに依存するという状況はなるべく作らず、自分一人でも出来るようなことを最初はやって、サービスを作っていました。

会社を辞めてからの起業には罠がある

佐々木:一方で、仲間を見つけたいなと思っていて、色んな友人に「こういうサービスを始めようとしていて、一緒にやってくれるエンジニアを探してるんだけど、誰かツテがある人いない?」みたいなことをやってたんですね。

 そうしたら、Facebook経由で友人がエンジニアを紹介してくれて、そこで出会ったのが一緒に「freee」を始めたエンジニアだった。そして、いざ二人でやろうということになり、会社を辞めてサービスを開発し始めるんですけど、そこには罠があって会社を辞めて起業するとすごい楽しいんですよね。

 「自由になれた」ということで、何を始めるかというとすごく無駄なことを始めてしまうんです。「自分たちは今まで構想は何となくあったけど、せっかく会社も辞めて走り出していくんだから、もう一度ゼロから考え直そう」とか言って、結構詰まっていたアイデアをゼロから考え直し、1ヶ月くらい無駄にしました。

 その結果どうなるかというと、何のブラッシュアップもされずに全く同じことをやろうということになるわけですよ。その1ヶ月間、手を動かさなかったのって本当に無駄だなと。その次に何に取り掛かったかというと、「ユーザーがサインアップする申し込みのフローから作ろう」と、あまり重要ではないところから始めてしまったんです。

 それよりも、会計帳簿をつけるところの仕組みやユーザーエクスペリエンスをどうするかといったサービスのコアな部分を作っていく方が大事。「ユーザーが僕たちのプロダクトを知ったら、まず申し込むよね、その時のステップをどうしようか」と順番を追って始めてしまったのは、大きな間違いだったと思います。

 それがなければ、半年かかっていたものが2ヶ月くらい短くなっていたと思うので、もっと早く開発を進められたと思いますね。

山内:色んな人にアドバイスを求めに行ったんですか?

佐々木:それは、あまり意識的にやろうとはしなかったんですけど、ユーザーにヒアリングしに行くということはしましたね。あとは、ユーザーになりそうな人。ことごとく、「こんなのは使えない」や「いらない」、「使っているイメージが湧かないですね」と言われ、5人に1人も「使いたい」と言ってくれなかったです。

 だから、本格的に展開しないものに対して、みんなが欲しいと言っているか言っていないかは判断軸にならなくて、それよりも自分たちの思いや事実の方が世の中に提案していく上では大事。

山内:この間、リクルートの新サービスを立ち上げているチームの話が記事になっていたのですが、その中で大事にしたいのは「Will」、意思だと。何を作るかよりも顧客視点、そして顧客視点よりも自分自身がまず何をしたいのかからスタートしなければ、本当に良いものは作り出せないと言ってましたね。それと似た話だなと思いました。

佐々木:そうですね、本当に「フォードの速い馬の話」など共通するところがあると思うんですけど、やっぱり新しくて大きい価値があるものは、そういった摩擦があるんじゃないかなと思います。(続く)


次の記事:「好きなことをビジネスにするのは危険」ーー 2020年に向けて、起業家は何を思う【後編】

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日本にも乱立し始めるシェア・レンタル系サービス。運営者たちが見据える、今後の展望


 海外では大きな成功を成し遂げ、何かと話題になることの多い、シェア・レンタル系サービスの領域。一方、日本では比較的小規模なサービスが乱立している印象だ。そんなシェア系サービスに注目したイベント「シェアカンファレンスVol.2」が2014年12月10日(水)に開催された。

 シェア系サービスの強みはその市場のプラットフォームとなることで、スケールメリットを得られるということだろう。日本のシェア系サービスに儲からないという印象があるのは、まだ多くのユーザーを獲得したサービスがないからであるとも言える。

 今回紹介するセッションに登壇したのは、株式会社エニタイムズ代表取締役の角田千佳氏、株式会社レレレ代表取締役の山本大策氏、株式会社ビズグラウンド代表の畠山 友一氏。シェア・レンタル系サービスを運営する3名がそれぞれのサービスの展望などを語った。

日常の「困った」を解決するサービス「Any+Times」


 日常の「困った」を解決してくれる家事代行サービス「Any+Times」。日本ではあまり馴染みがないサービスかもしれないが、海外では「Homejoy」を筆頭に家事代行サービスは数多くあり、市場規模も大きい。

 「Any+Times」は日本の現状の課題を鑑み、家事代行サービスだけでなく「介護」の領域にも進出していくという。

 「介護って、プロでなくとも出来る部分は結構ある。最近は『後見』や話し相手を求めるといった需要はたくさんあるので、そこも狙っていければ」と角田氏。対応領域を広げることで、規模の拡大を図っていくそうだ。

個人のスキルを売買する「Time Ticket」


 個人のスキルを売買できるサービス「Time Ticket」は、前に展開していたサービスが上手く行かなかったことから「とにかく面白いものを作らなければ……」というところから始まったそう。

 自分の時間を売る、他人の時間を買うという仕組みは確かに面白い。その面白さから、ローンチ時は大きな話題を呼び、著名人が自分の時間を売っている姿も目立った。

 面白さを追い求めてしまったが故の苦労が、やはりマネタイズだそうだ。山本氏は「オフラインでずっとやっていくのは厳しいと分かったので、オンラインタスクを攻めていく。」と語り、やはりシェア系サービスは規模を獲らないと厳しいよう。

 Time TicketはWEB完結型のサービスではなく、ユーザー同士リアルな場で会うことが多いので、そのあたりを糸口にしていく。

士業のオンライン相談サービス「Bizer」

 「Bizer」は士業にオンラインで相談できるという確かなニーズに焦点を当てたサービス。月額2,980円で税理士や社労士、行政書士に相談することができる。また、登記用の書類も自動で作成できるなど、周辺サービスの充実も図っている。
 
 現在、利用企業は300社。その多くは立ち上がったばかりのスタートアップで、こうした企業のニーズは高いが、顧客がスタートアップだけでは利用企業の数に限界がある。士業を利用している人たちをユーザーにすべく、試行錯誤している段階だ。

 その一つとして、社員雇用や年末調整といった会社運営でのイベントを軸に、タスクごとに依頼できる機能を公開。多様なニーズに応えることで、サービスの拡大を目指すという。

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