1ドル120円で「日本経済は危険」!?
2年ほど前、安倍政権がスタートした直後、1ドルが120円になると日本経済は危険といっていた著名な経済学者がいる。もともと、世界標準のインフレ目標を理解できずに、金融緩和による円安の弊害をいおうとした発言だ。
為替は二つの通貨の交換比率なので、どちらが相対的に多いかどうかで決まる(本コラムでは、何度も指摘しているが、例えば、2011.08.22付け「史上最高値を突破した円高につける薬はある 為替を読む『高橋法則』と民主党代表選の見方」)。
円安は、円がドルに対して相対的に多いということなので、日本が金融緩和すればそうなる。その一方、モノに対しても円が多くなるので、モノの価格は上がる。つまりデフレになりにくい。逆をいえば、円高はデフレ状態と整合的になるので、円高論者はデフレ論者でもある。
冒頭の経済学者はデフレ論者でもあるので、円安が不味いといったわけで、それなりに意見には矛盾ない。デフレ論者の特色は、雇用を考えない。これは、インフレ率と失業率には逆相関の関係があるので、デフレがいいという人は高い失業率は問題にしない。その経済学者もそのとおり日本には失業問題はないという立場であろう。
というわけで、デフレ論者は、円安になると失業率が減るという事実は無視する。昨年12月22日の本コラム「「円安批判」は的外れ。財務省利権の「外為特会」を今こそ活用せよ!」で指摘したように、円安は失業率を低下させるにもかかわらずだ(下図)。
ちなみに、円安はGDPを増加させる。実は、日本に限らずどこの国でも、自国通貨安はGDPを増加させ、自国通貨高はGDPを減少させる。
こうした分析は、経済政策では常識であるが、例えば、2009年度の経済財政白書では「いずれの国でも自国通貨高は景気にマイナス」と書かれている。
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