移動給油車:政府、過疎地で実証試験へ 予算案に開発費

毎日新聞 2015年01月12日 07時30分

国内のガソリンスタンド数の推移
国内のガソリンスタンド数の推移

 近隣にガソリンスタンド(GS)がない「GS過疎地」で住民の利便性を図るため、経済産業省は、ガソリンを運搬するタンクローリーから自動車に直接給油する方式の導入に向けた検討に入った。自動車に頼る地方向けの「移動式GS」と位置付け、給油装置の開発費など約1億5000万円を2015年度予算案に計上し、実証試験を始める。ガソリンの直接給油は保安上の観点から消防法で原則禁止されているが、経産省は安全に給油できる装置を開発し、消防庁に規制緩和を働きかけたい意向だ。【安藤大介】

 経産省によると、全国のGS数はピークだった1994年度末の約6万カ所から13年度末に約3万4000カ所と4割以上も減った。少子高齢化や人口減でガソリン需要が減少し、地方を中心にGSの廃業が相次いだためだ。

 経産省はGSが3カ所以下の市町村を「GS過疎地」と定めており、全国で265市町村に上る。GSがない自治体も8町村ある。GSが近隣にない場合、自動車のほか農業機械への給油に支障が生じる。

 経産省は、地域の石油販売業者などがタンクローリーを定期的に巡回させ、広い駐車場などを利用して、住民の車に直接給油することなどを想定している。GSよりも業者の負担が大幅に軽減するとみている。

 ガソリンは引火性が強いため、灯油や軽油(トラックなどの燃料)と異なり、GS以外での給油が原則認められていない。消防庁は「保安上の課題が多い」と規制緩和に慎重だ。だが、欧米では給油装置付きで認められており、経産省はより安全な装置や仕組みを目指す考え。ただ、装置が開発されても、給油できるのは、資格を持つ石油販売業者の社員などに限る方向だ。

 また、経産省は、直接給油とは別のGS負担軽減策も検討する。GSには、タンクローリーが運んだガソリンを貯蔵する地下タンクの設置が原則的に義務付けられているが、タンクがなくても済むように、タンクローリーからGSの給油機を通して自動車に給油できる仕組みの研究も進める。

 【ことば】給油の規制緩和

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