◇初場所<初日>
遠藤強し!−。初日に実現した初顔合わせのホープ対決で、遠藤(24)=追手風=が関脇2場所目の逸ノ城(21)=湊=を一方的に寄り切った。22本の懸賞がかかり、ファンや関係者らが注目した一番を制した遠藤は、昨年後半に話題を逸ノ城にさらわれた形になったが、再び勢いを取り戻しそうだ。
遠藤と逸ノ城。次代の角界を担う2人が土俵に向かうだけで、満員札止めの館内から波打つ大歓声がこだまする。支度部屋の力士たちの動きも止まる。ファン垂ぜんの“お年玉”カードを遠藤が制した瞬間、ボルテージは最高潮。鳴りやまない拍手を体全体で浴びながら懸賞金を受け取り、「フーッ」と息をはいた。
「場所の最初でもあり、新年最初なので、いい相撲で白星を飾れてよかったです。僕の方が体が小さいので中途半端に当たってもよくない。しっかり当たろうと思った」
完璧な内容だった。鋭い立ち合いから202キロの巨体を突き起こす。もろ差しになると一気に前へ寄る。すると土俵下の審判が手を挙げ、行司が取組を止めた。逸ノ城の左足が徳俵の横に出ていたのだ=写真(上)。
「(逸ノ城の足が出た)感覚はない。振り返ったときに蛇の目(土俵の外側に約20センチの幅で少し厚く砂を敷いてある部分)が大きく乱れていたので、出たんだなと」と顔色を変えずに振り返った。
昨年12月の番付発表前後に逸ノ城が初めて出稽古に来た。計4日間で22勝20敗。そこで試したのが立ち合いから突き起こして寄り切るパターンだった。「収穫を生かせた」。稽古でイメージしていたものと同じ内容でつかんだ白星だ。
1年前の初場所。ざんばら髪だった遠藤が敢闘賞を受賞して一気に知名度は全国区になった。だが、秋場所で新入幕優勝を争った逸ノ城に主役の座を奪われた。地元・石川県穴水町にある「さわやか交流館プルート」で本場所中にパブリックビューイングが行われているが、横綱鶴竜から初金星を獲得した夏場所4日目に約50人詰め掛けていた町民も、秋場所以降はゼロの日もあった。
地元、さらに角界を盛り上げるいいきっかけになりそうか、と聞かれると「そうなってほしいです」。審判として土俵下で見つめた師匠の追手風親方(元幕内大翔山)は「口には出していないが、ことしの目標は三役だから」と弟子の思いを明かした。2015年、新三役へ。最高のスタートダッシュを飾った和製ホープにとって再び注目を浴びる1年が始まった。(永井響太)
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