「獰猛なコレラ菌」、周りの細菌を槍で刺し殺し、食べて自らを強化、サイエンス誌より
スイス連邦工科大学の研究グループの報告

コレラ菌。記事と直接の関係はありません。

コレラ菌。記事と直接の関係はありません。

 いわゆる「コレラ」という病気は、ビブリオ・コレラエ(以下、コレラ菌)が小腸に感染を起こして発症する。水様性の下痢から重篤な脱水症状を起こすことが特徴である。

 このたびコレラ菌が、スピア(小さな槍の形をしたもの)を使って、周囲の菌を突き刺して殺し、そのDNAを取り込んで自らを強化しているという事実を突き止めた。

 スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)が、サイエンス誌2015年1月2日号に報告した。

捕食物の特性を取り込む

 コレラ菌の、スピアで他の細菌を殺す「捕食行動」は、菌の環境によって生じている。

 コレラ菌は自然界では水中に住んでおり、エビやカニといった甲殻類に生着し、貝殻の成分であるキチンという糖類を食べて生息している。

 今回、分かったのは、このキチンを利用し、コレラ菌が攻撃モードを作り出しているということだ。

 周囲の菌をスピアで攻撃し、そのDNAを獲得しており、「水平転移(horizontal gene transfer)」として知られるメカニズムの一種だ。

 コレラ菌はその捕食物の特性を吸収してより毒性を増している。

薬への耐性拡大のメカニズム

 研究グループはキチンの上でコレラ菌を培養する実験を行った。

 その結果、スピアはコレラ菌の自然界の生存システムの一部であるだけでなく、遺伝子の突然変異にも寄与していた。コレラ菌がより毒性を増し、抗菌薬にも耐性を獲得する仕組みに関係しているという。

 スピアは人間の腸内の保護バクテリアも攻撃していた。危険度を高める要因の一つというわけだ。

 研究グループは現在、研究を進め、チキン誘導性スピア産生と水平転移の相互作用の研究を継続中。

 この研究が進めば、コレラ菌の伝染の理解につながる可能性がある。

 

文献情報

Borgeaud S et al.Bacterial evolution. The type VI secretion system of Vibrio cholerae fosters horizontal gene transfer. Science. 2015;347:63-7.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25554784

Killing for DNA: A predatory device in the cholera bacterium.

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-01/epfd-kfd122314.php

 

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