ふ～なんでこうお肉の値段が高いかねぇ～

　ひとり愚痴をこぼしながら家路へと急ぐ。市場でオークの肉を買ったのだが、先月と比べて二割も割高になっていた。魔獣は冒険者が狩った後、市場に流れるのでどうしても中間業者にマージンが入ってくる。ただその分を差し引いたとしてもこのところの値上げはひどい。

　冒険者達め、さぼっているんじゃないか？

　冒険者達が魔獣を狩らず品薄になれば値段が上がるのは自明の理だ。

　あ～自分で狩りを出来るだけの力があればこんな事悩まなくてもいいのに……

　そんな事を考えながら帰っていると何やらお店が騒がしい。

　何事だ？

　店に戻ると見知らぬ男達と父さんが激しく口論をしていた。父さんは怒りで顔を真っ赤にしている。母さんは泣いていた。母さんのセミロングの髪は乱れ、目から涙を流している。只事ではない。

　はっ!?　ティムはどこ？

　とっさに店内を見渡す。ティムは変態(ニールゼン)と一緒に両親達と少し距離が離れたところでじっとその様子を見ていた。

　ほっ、どうやら無事のようね。

　それにしてもこいつら誰だ！

　見るからに悪人面の男達が父さんと言い争っているのだ。

「いいか、よく分かってないようだからもう一度教えてやるぞ。お前は今一千万ゴールドの借金があるんだ」

　えっ!?　ダディ、まじですか！　家って借金があったの？　初耳だよ。

「で、でたらめ言ってんじゃねぇえ！　俺はそんなもん借りた覚えはないぞ！」

　父さんがそいつの胸倉を掴む勢いで反論する。そうだよね、実直な父さんがそんな借金をするなんて考えられない。

「だから、言っているだろ！　この町のビセフという野郎がお前の店を担保にうちから金を借りたって」
「そんな馬鹿な話があるか！」
「ほらこの証文を見てみろ、ちゃんと記載してあるだろうが、それとも何か？　契約を反故にしようというのか？　それは王家に対する反乱でもあるんだぞ！」
「なっ……てめ、くそ、ビセフさんがそんな……で、でも一千万ゴールドも借りているわけがない」
「うちの利息はトイチ、十日で一割だ。借りた分以外は利息に決まってんだろ！」
「そ、そんな……」
「とりあえずこの店は俺が頂く。へっ、掃除も行き届いていやがるし、なかなか住みやすい家じゃねえか？　気に入ったぜ」

　そう鼻息荒く捲し立てていた男が俺の存在に気付き下卑た笑みを浮かべてくる。

　うぇ～いやらしい目つきで見るんじゃねぇ！　鳥肌が立つだろうが！

　不愉快気にその男を睨み返す。その男は五十代前半だろうか頭は禿げ上がっており、中年独特の嫌な臭いを漂わせている。ただ、その体つきは筋骨隆々で元々は冒険者の類だったのかもしれない。

「ほぉ～これは美人な娘がまだいるじゃねぇか？　そこにいる小娘はちょいと小粒だがこいつは熟れ時だ。金の代わりにこいつで手を打ってもいいんだぜ？」

　男の口元がだらしなく緩んでいる。ニヤニヤといやらしい笑みを見せ俺に近づいてくるのだ。

　こ、これはヤバイ予感がする……

「貴様ぁああ、娘に手を出すんじゃない！」
「おっと、暴力で片をつけようってか？　いいぜ、俺も嫌いじゃないからよ」

　父さんは激昂しそいつを殴ろうとするが、逆にその手を捻じりあげられてしまった。ミシミシと父さんの腕が悲鳴を上げる。

「ぐわぁあ！」
「父さん！」
「へっへ、その腕へし折ってやるぜ！」
「止めろ！　お、お前達、さっき町の警備を呼んだぞ！」

　俺は咄嗟にはったりをかます。暴力に慣れている奴らみたいだが警備隊に手を出すほど愚かじゃないはず……

　後は俺のはったりが通じるのを祈る。

「警備ねぇ～まぁ、嘘だと思うがお嬢ちゃんの言葉を信じて今日のところは引き上げてやろう」

　男はそう言って掴んでいた父さんの手を放し、乱暴に突き放す。父さんは突き飛ばされテーブルに激突した。

「ぐはっ、て、てめぇえ！」
「お前、一週間が期限だぞ、期限までに金がなかったらこの店と娘を頂いていく」

　男達は捨て台詞を吐くとニヤニヤしながら店から出て行った。

「父さん、母さん！」

　項垂れている両親のもとへ駆け寄る。父さんは男達に暴力を受けてあちこち痣が出来ていた。母さんは涙で顔をはらしており、暴力こそ受けていないがその精神的ショックは測りしれない事だろう。

「ティレア、ごめんなさい。そういう事だからこの店売りに出すかもしれない」
「えぇえ、どうしてさ？　あんなの言い掛かりだよ、そんなのおかしいよ！」
「あの人達、王都の金貸しみたいなんだけど……手口が恐ろしく巧妙なの、私も証文を見たんだけど完全にうち名義の借金になっているのよ」
「そんな……それでビセフさんはこの件は何て言っているの？」
「それが憔悴して家に引き籠っているみたいで……」

　はっ？　あのヘタレ(ビセフ)なんて事やっちゃってくれてるの？　完全にお前のとばっちりを受けているよね？　本当、憔悴して引き籠るぐらいなら金なんて借りるんじゃねぇえよ！　だいたい大金使ってまで何が欲しかったんだよ――ってあれ？

　……もしかして俺のせい？

　そういえばこの前、ゴスロリ服を持ってきてくれた時、やばいとこから金を借りるはめになったって言ってたっけ……

　えっ!?　で、でもでも、そこまで強制してなかったと思うけど……

　いやいや何で俺が反省しなければならない。要するにやばいところから金を借りるヘタレ(ビセフ)が悪い。

　とにかく店の借金はどうしよう？

　まったくこんな時代劇みたいな事が我が身に降りかかろうとは……

　このまま打開策を見つける事が出来なければ絶対にまた奴らが来る。今度は借金の期限も過ぎているから実力行使も辞さないだろう。

　そうなれば俺は借金のかたに……

　ひぃ――っ！　考えるだけで身震いがしてくる。

「ね、ねぇ、このままだと私、借金のかたに売られちゃうの？」
「そんな事させるか！　父さんに任せておけ！」

　父さん、気持ちは嬉しいよ。でも無理だ、父さんは根っからの料理バカだから海千山千の金貸しに敵うわけがない。

　よし、ここは俺の出番だ。ダディ、任せてよ、町の小娘だと思って甘く見るな！

　これでもゲーム逆ティン裁判をやり込み、漫画ミナミの皇帝を読みまくった俺に死角は無い。契約書の隙を見つけて逆に営業妨害で訴えてやるわぁああ！　

　バカめ、その決定異議アリだ！　あっはははは！

「父さん、ここは私に任せて。私が何とかしてみせるから」
「馬鹿野郎！　何を言っているんだ！」
「ティレア、馬鹿な真似は絶対にしちゃだめ！　相手はただの金貸しじゃないの！　噂じゃ盗賊団と繋がりがあるそうよ」
「そ、そうなの？」

　両親は神妙な顔つきでコクリと頷く。

　奴らは窃盗から果ては殺人まで犯罪の噂が堪えないごろつき集団だそうだ。噂によるとあの親分格の男の名はジャコウと言ってB級の冒険者でありながら裏では相当の悪事に手を染めているらしい。実際顔つきを思い出すと確かに山賊の親分みたいだった。

　両親から予想外の情報を告げられ顔を青ざめていると、父さん達は「町の皆に相談に行く」と言って出かけて行った。

　店に俺とティムと変態(ニールゼン)が残される。とにかくティムが無事なのは何よりだ。俺はティムに駆け寄り声をかける。

「ティム、大丈夫だった？」
「お姉様、ご安心ください。作戦は継続中です。しかし我は今日ほど怒りを覚えた事はありませぬ、特に奴らがお姉様を侮辱した時はもう少しで店ごと吹き飛ばすところでした」
「そ、そう、よく我慢したわね、えらいぞ」

　中二病のせいで強気な態度だが内心は怖かったに違いない。俺は慰めるとばかりにティムの頭をなでなでしてやる。傍らにいる変態(ニールゼン)に声をかけるのも忘れない。

「ニールもよく耐えてくれたわね」

　本当、こいつは誰かれ構わず向かっていく狂犬だったから心配だったよ。

「はっ、私もカミーラ様と同じ思いで堪えておりました。それにティレア様が大切にされているお店をあのようなクズの血で汚すわけにはいきませんからな」
「お、おう……」

　 もうね……つっこみようがないよ。

　こういう時、中二病患者って恐ろしい、どんな悪党と対峙しようがどこまでも強気で攻められるのだもの。

「お姉様、奴らは店外に出ていきました。チャンスです。闇夜に紛れて始末すれば情報は漏れませぬ」
「ティレア様、私にお任せください、奴らの無礼千万な態度、許せるものではありませぬ！　奴らには人間が感じられる痛みという痛みを味あわせ、いっそ殺してくれと言わせるぐらいの責苦を与えてご覧にいれます！」

　変態(ニールゼン)はそんな過激な発言をするや外へ出ていこうとする。

　やばい、この言動、ブラフではない。中二病特有の暴走を感じた。

「ち、ちょっと待ちなさい！　行かなくていい、あなたの気持ちだけで十分よ」
「はっ」

　変態(ニールゼン)は何やら煮え切らない様子だ。いくら変態(ニールゼン)だからって無駄に命を散らせたくはない。こいつは止めとかないと本当にヤクザまがいのところに向かっていくからね。本当に中二病って恐ろしいものだ。

　さて変態(ニールゼン)のフォローはここまで、本題に移る。

　これからどうしようか？

　契約の不備をつつくにしても誰か一緒に来て欲しい。

　ヘタレ(ビセフ)は引き籠り中だからだめだ。まぁ無理やり引っ張ってきたとしてもドキュン、不良程度で気絶するヘタレである。本場もんのワルのところに連れて行ったところで気絶するのがオチだ。

　では変態(ニールゼン)を連れて行くか？

　いやそれも却下だ。変態(ニールゼン)も虚弱すぎる。きっとワンパンどころか奴らの殺気を受けただけでショック死するだろう。

　じゃあ、ティムを……

　いやいやいや、考えただけでも恐ろしい。あんな闇金ウソジマ君だらけのところにティムなんて連れて行けるはずがない。絶対にだめだ！

　はぁ～色々考えてみたが、つまるところ連れて行く人に迷惑をかけちゃうね、しょうがない、一人で行くしかないか……

「とりあえずこの件は私に任せなさい。奴らには私一人で行くから、ティムとニールはお店で待機しておいて」
「ティレア様が行かれるのですか？　あの程度のゴミ、ティレア様の手を煩わせるまでもないと思うのですが……」
「ニールゼン、お姉様も何かお考えがあるのだろう」
「そうよ。考えた末の事だから、しっかり留守番するのも仕事のうちだからね」
「はい、ご心配にはおよびませぬ」
「お姉様、留守の事は我にお任せください」

　ティム達に留守を託し、俺はウソジマ君達がいるとされる根城に単身乗り込む事にした。

　う～怖い……

　がくがく震える足を奮い立たせ奴らの根城へと急ぐ。

　だが、根城へ急ぐ中、ふと思う。

　待てよ？

　よくよく考えればこの世界、法律なんてないに等しい。絶対的な力をもった者が正義なのだ。書類の不備をつついたとしても奴らが逆切れしたらそれでお終いだ。

　それなら力を見せる？

　それもダメだ。この前、ドキュン共を倒したといっても、しょせんドキュン共は素人、只の不良であった。だから作戦によっては奴らをお仕置きする事が出来た。だが、今回は本場もんのワルだ。俺がいくら小手先の作戦を練ろうが奴らに一蹴されるだろう。

　はは、これはもうどんなに考えても詰みだろ……

　父さん達も町の皆と相談すると言っていたがこれはどうしようもない。駆けていた足を止め、その場にうずくまる。

　しょうがない、もう店をたたんで夜逃げするしかない。あ～慣れ親しんだこの町ともお別れだ。俺はがくりと膝をついたままぽろぽろと涙を流す。

「お前、こんな所で何をしている？」
「へっ？」
「お～お前はティレアと言ったな。この前は情報助かったぞ、王都に不審人物がいたのは間違いなかった」

　聞いたことがある声に振り返ってみると、そこには見目麗しいエルフがいた。黒刀を装備し颯爽と佇んでいる。

「あ、あ、あ……」
「久しぶりだな、忘れたか？　私だ、レミリアだ」
「レ、レミえもーん、道具出してぇ――っ！」

　なりふり構わずにレミリアさんに抱き着く。あぁ、こんな絶望の中でレミリアさんに出会えるなんて……まさに救世主である。

「お、おい、だから抱きつくなと言っただろ！　離さぬか！　むっ!?　あいかわらず力があるな、お前！」
「ふぇえええん、助けてください！　困っているんです！」
「えぇい、分かった、分かった、話を聞いてやるから離れろ！」

　俺はレミリアさんから離れると、これまでの事情を一心不乱に話す。

　悪人によって幸せな暮らしをしていた一家に不幸が訪れようとしている。その相手は時代劇に出てくる悪代官そのものの悪っぷりだとレミリアさんに強調した。

「要するに悪い金貸しに目をつけられているから助けてほしいと」
「はい」
「悪いが、私はそんなに暇じゃない。ここに来たのは魔王軍の調査の為だ。やはりこの辺りは怪しいのだ」

　それこそそんな魔王軍なんて夢物語に付き合っている暇はないんだ。こうしている間にも一家離散の危機が迫っているんだから。

「お願いです、レミリアさんしか頼りになる人はいないんです」
「この町にも警備の者がいるだろ、確か元冒険者がいたはずだ、そいつに頼め！」
「そ、それがですね、そいつは本当にどうしようもない奴なんですよ。町の不良にやられるぐらいですから」
「はっ？　そんな者が警備に？　確かここはCランクの元冒険者がいるという話だったが……」
「そうなんですけど肩書きだけなんです。運で取ったんでしょう」
「いや、ランクは運だけで取れるほど甘くはない、Cランクであれば猶更だ」
「じゃあCランクって言うのは偽物なんでしょう、きっと偽造したんですよ」
「ありえぬ、ランクの偽造など最も愚かな行為だ、ギルドに目をつけられるだけでは済まされない。王都から逮捕状が出るほどの事だぞ！」
「そうなんですか、どっちにしろ、この町の警備長は家に引き籠っていて使えないんです。もう何でも良いから助けてください！」
「悪いがこの世界の危機が迫っている。大事の前の小事に関わっている暇はない」
「あぁ、見捨てるんですね、確かレミリアさん勇者の末裔と聞いていたのに……」
「むむむ！」
「何がむむむですか！　民を見捨ててそれで勇者を名乗れるんですかねぇ」
「し、しかしだな……」
「あぁ、かわいそうなティム、夜逃げして見知らぬ町できっと一家野垂れ死にするんだろうなぁ～」

　うるうると目を潤ませ、レミリアさんに訴えかける。レミリアさん、民が困っているんです。勇者としての矜持はないんですか！

「ふぅ、仕方がない、そいつらのところに案内しろ、その代わり魔王軍の情報が入ったら逐一知らせてもらうぞ」
「分かりました、本当にありがとうございます！」

　助かった、なんとかレミリアさんの協力を得る事が出来た。これで安心だね。
　俺はレミリアさんを連れてウソジマ君達が滞在しているとされる根城に向かう。

　そして……根城に到着。

　見るからに危険な山賊のアジトのような所だった。もう異世界版組事務所だよ。今更ながらにレミリアさんと一緒でよかった、とてもじゃないが一人でこんなところに行けそうになかった。

　ふふ、レミリアさんがバックにいれば何も怖い事はない。俺の弁舌、口八丁を活用する事が出来る。

「とりあえずその証文のせいで多額の借金を背負うことになったんです。でも、無理やりにでっちあげたんできっとどこかに矛盾があるはずです」
「そうか」

　よし、なんとかその矛盾を見つけ出して糾弾してやる！　レミリアさんがバックにいるんだ、逆切れして暴力に訴えられる事はないだろう。

「あ、レミリアさん、ここみたいです。とりあえず、私が入って――」
「この悪党どもぉ――っ！」

　ヤクザのかちこみですかぁ――っ！

　レミリアさんはドアを開けて入るなり、そこにいるウソジマ君達をぼっこぼっこにのしていく。

　あぁ、あぁ、奴ら訳も分からずにどんどんボコられていくよ。反論の余地なく倒されていくウソジマ君達。俺の言葉を鵜呑みにして俺が悪女だったらどうしてたんだろう、こいつらがただの善良な市民だったら……

　レ、レミリアさん、それでも勇者の末裔――いや、ある意味正しいのか、勝手知ったる我が家のごとく他人の家の壺を割りアイテムをかっさらっていく。そして正義の名のもと、どんな弱小モンスターであろうと断罪の剣を振るう。

　レミリアさん、あんた勇者そのものだよ。

　ウソジマ君達も襲撃に気付き防戦するが、レミリアさんの敵ではない。さすがはS級の冒険者かつ勇者の末裔である。もう一方的なワンサイドゲームだ。

　レミリアさんはうちの借金の証文を探しているらしくウソジマ君達をぼっこぼこにのしながら「これか？　この紙か？」って尋ねてくる。

　もうね、契約の不備をつつこうとしていた俺が馬鹿みたいだ。やっていることはヤクザそのものだよ。

　いかん、いかん、何を考えているんだ、やり方はどうであれレミリアさんは俺達家族を助けてくれているんだ、感謝しなければいけない。

　そうこうしているうちに一枚の証文をレミリアさんが見せてくる。

「これか？」
「あ～レミリアさん、それです」

　レミリアさんがとうとうお店の借金の証文を見つけてくれた。そしてレミリアさんはそれをびりびりと破いていく。

「あっ！　てめぇ、ふざけた真似をしゃがって！」
「大声を出すな！」

　レミリアさんはウソジマ君達のリーダであるジャコウの腕を捻る。ぎりぎりと腕を捻られ苦痛の表情のジャコウ、ときおり苦悶の声も叫ぶ。

　ざまぁ、みやがれ！　父さんに暴力をふるった罰だ！　こういう奴は少しでも人の痛みを感じてほしい。

　さらにレミリアさんは力を込めジャコウの腕を折るかのごとく捻り上げる。

「痛でぇ！　あいででででっつ、テメッ！　ごらぁ！　離しやがれぇ！」
「だまれ、悪党、死ね！」

　レミリアさんがジャコウの腕を捻りつつ、剣を抜く。そしてその切れ味よさそうな黒刀の剣先をジャコウの喉に突き刺――

「うぁああ！　ストップ！　ストップ！　レミリアさん、殺しちゃ不味いですよ」
「なぜ、止める？　こいつは悪党なんだろ？」
「いや、そうなんですけど、いくらなんでも殺すなんて……」
「ティレア、ここで殺しておかないとこいつはまた弱者を食い物にするぞ！」

　まさに仰る通りです。だが前世平和な日本で生きてきた俺には刺激が強すぎる。俺は借金さえ無くなればそれでいいのだ。

「いいんです、もうこいつらは警備の人に任せましょう」
「そうか」

　レミリアさんは剣を鞘におさめる。

　ふ～なんとか事は収まったかな？

　ジャコウ達は警備に連れて行かれお縄、うちの店も借金は無くなって元通りだ。
　本当にレミリアさんには大感謝だね。お返しにぜひ魔王軍の情報を教えたい。

　魔王軍の情報……？　無い情報をどうやって知らせよう？

　邪神軍の情報ではやっぱりだめだろうね。