第二十三話 「殺人ヌンチャクの威力を確かめなさい」
ドキュン共に制裁するべく攻撃を開始する。ドキュンは三人、囲まれる前に一人は倒す。だが、竜ドキュンの剣の間合いは長いし、炎ドキュンは火炎魔法を発動させていてうかつに近づけない。
どう動くべか?
考えるている間にもドキュン共は近づいてくる。
「お姉様、援護します!」
後方に隠れていたティムが魔法弾を放ってくれた。唸りをあげて魔法弾が直進していき、ドキュン共の足元を脅かす。
「ちっ、カミーラの奴、後方に待機してやがったぞ」
「変ですね、魔力は感知しませんでした」
ティムの魔法弾の嵐にドキュン共が防御の姿勢に変ずる。奴らも初期魔法とはいえ、あれだけティムに魔法弾を浴びせられたらうかつに動けまい。
チャンス!
俺はティムの魔法弾でドキュン共の足が止まっているうちに間合いをつめ、ヌンチャクを竜ドキュンの腕めがけて振り下ろした。
「ぎ、ぎゃああ! う、腕がぁ――っ!」
俺のヌンチャクが見事に竜ドキュンの腕を捉えた。竜ドキュンは叫び声を上げ、地面を転がりのた打ち回る。
いやいやいや、さすがに痛がりすぎだろ! いくらヘタレが魔法付与したからって竜人でしょ! みるからに固い鱗をもっているじゃん。それともよく見ると顔は青白いし、ドキュンとはいえ虚弱体質でカルシウム不足なのかな?
――って、うおっ!
竜ドキュンの腕が曲がってはいけない方向に曲がっている!? よくよく見てみれば竜ドキュンの腕は九十度に折れ曲がっているのだ。
ま、まじですか……
ヘタレの癖にやるじゃん、竜人の腕を折るほどの攻撃力ってどこまで魔法付与つけてんだよ。ヘタレの奴、ノミの心臓だけど支援魔法だけは得意なようだ。
改めて手に持っているヌンチャクを見てみる。ヌンチャク全体にうっすらと魔法のオーラが包んでいるのが見えた。このオーラが竜人の鱗を貫いたのである。
よ、良かった……
俺は変態がまたバカな事をしでかしたら、こいつをお見舞いしてやろうかと思っていた。だが、当てていたら変態の奴、死んでたぞ。
竜ドキュンの腕は折れた骨が皮膚を突き出て白い骨が見えている。いわゆる複雑骨折というやつだ。
やっぱり痛いよね?
竜ドキュンは脂汗をかき苦悶の表情を見せている、鎮静剤が必要な状態だ。
ち、ちょっとやりすぎたかな?
ティムに手を出すって言われたから頭に血が上っちゃったけど――
これは過剰防衛かもしれない。竜ドキュンはどうみても全治六か月の重症だ。
とりあえず、これで手打ちにしよう。いくらドキュンといっても俺は犯罪者になる気は毛頭ない。今後、ティムに手を出さないと誓ってくれればいいのだ。
「そ、その腕じゃあもう戦えないわね、退散するなら今の内よ」
「はぁ、はぁ、き、貴様、ゆ、許さん、絶対に許さん! こ、このぉお、ふん!」
竜ドキュンは怒りに満ちた目つきで俺を睨み、そしてあろうことか折れた自分の腕をみずから引きちぎったのだ。
「えっ!?」
な、何で自分で腕をもぎ取っちゃうの? 病院に行けば済む事じゃない!
いったい何を考えているのか……
竜ドキュンの腕はちぎられ肘から下が無くなってしまった。俺がその光景に呆然としていると竜ドキュンは身体をプルプル震え始めた。
そして……
「うぉおお、だぁあ――っ!」
でぇ――――ええ!
う、腕が生えた……
あ、あんたどこかの大魔王ですか!
竜ドキュンは気合の雄叫びとともに無くなった腕をトカゲのしっぽみたいに生やしたのである。
はは……
た、確かに病院に行くよりそのほうが早いよね。それとも、竜人特有の根性焼きみたいなものか?
とにかくびびっては奴らの思う壺だ。動じていない、強者としての態度を見せねばならない。
「へ、へぇ~驚いた、腕が再生するんだ――だけど、魔力までは元に戻らないみたいね」
「邪神、よく見抜いてます。セイリュウの魔力は今のでがくっと下がりました」
あっ、やっぱり!
そうだよね、あんなすごい事をやって魔力を使わない訳ないよ。当てずっぽうだったけど強者のふりになったかな。
「スザクどういう事だ! 俺の腕を折ったんだぞ、あれが五千などありえん!」
「……いま見ると二十万まで上がってます」
「なっ!? それでは奴は三百から二十万まで上げたというのか!」
「それもまだまだ上がりそうです、邪神は普段魔力を抑えているみたいです」
「どうやらヒドラーが言っていた魔王並みとは眉唾じゃなさそうだな」
「後方にカミーラも控えている、これはちょっと厄介だぞ」
「先にカミーラを燃やしちゃいますか?」
「いや、奴らはうまく連携してそれを阻止するだろう」
「じゃあ、どうする?」
「スザク、ビャッコやるぞ――魔邪最大封殺呪文だ!」
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