高知から問う:2014総選挙/上 生活保護打ち切り 医療費心配、病院行けず /高知

毎日新聞 2014年12月09日 地方版

 ◇月11万円、食費切り詰め

 家賃1万7000円の高知市営住宅。山崎宏子さん(51)=仮名=がこの場所に暮らし始めて、約15年。近くのスーパーで働き、月収は約11万円。「冬場はどうしてもガス代が高くなる。切り詰めるのは食費です」。貯蓄に回す余裕はない。

 4年前、勤めていたスーパーの人員削減に遭った。やっと見つけた仕事は、月6万円のレジ打ちのアルバイト。家を出た2人の子供に「迷惑を掛けたくない」と生活保護に頼るほかなかった。その後、別のスーパーで社会保険適用のパート社員として採用された。収入は増えたが、その分、生活保護の受給額が減ったため生活は苦しいままだった。

 昨年8月、生活保護が打ち切られた。市職員から電話で事務所に呼び出され「あなたは保護の基準外」と、にべもなく言われた。「いろいろ(廃止の)根拠を出されて、納得するしかなかった」

 その後、高血圧を患ったが、医療費が気に掛かり病院に行くのもためらわれる。山崎さんは「入院でもしたらと考えると、毎日不安でたまらない。消費税10%なんてとんでもない」と肩を落とす。

 高知市によると、今年3月現在、市内で約9500世帯、約1万3000人が生活保護を受給している。保護率(1000人当たりの受給者数)は38・3で、中核市では全国5番目。死亡や就職などで月80人ほどが廃止になる一方で申請者も多く「受給世帯は横ばいで、市の負担もかなり大きい」(市福祉管理課)のが実情だ。

 高知労働局によると、県内の有効求人倍率は今年7月に0・86倍となり過去最高を更新した。ところが、正社員では0・46倍(10月)と、全国で45位の低さ。非正規雇用の増加が全体の数値を押し上げている格好だ。

 最近、山崎さんがとりわけ感じることがある。「仕事先で、万引きで捕まるおじいちゃんやおばあちゃんをよく見かけるんです。盗んでいるのは食品や日用雑貨。年金だけでは苦しいのかも」

 衆院が解散された11月21日、安倍晋三首相はその理由を「(一定の成果を上げた)アベノミクスを進めていくかどうかが問われている」と説明した。実感無き「景気回復」に戸惑う有権者の声は、国政に届くのか。【最上和喜】

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 安倍政権の2年間を高知の現場から問う。

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