暮らしの現場から:検証・安倍政権/1 生活困窮者 「切り捨てられている」 自立迫られ生活扶助減額 /岩手

毎日新聞 2014年11月23日 地方版

 事実上の選挙戦に入った衆院選。安倍晋三首相は「アベノミクス」の是非を争点化する考えだが、生活困窮者対策や安全保障など安倍政権が進めてきた施策も問われる。その2年間で県民の「暮らし」はどう変わったか−−。現場から検証する。

 「家にいると寒くてついストーブをつけちゃう。だから晴れている日は外を歩き回る。節約だよ」。衆院が解散した21日、盛岡市の無職男性(66)は語り始めた。2009年から月約10万円の生活保護を受けて6畳1間のアパートで暮らす。朝夜の冷え込みは厳しい。冬季(11月〜3月)は生活保護に灯油代など1カ月で1万5800円が加算され「多少は楽だがもったいない」と苦笑する。

 生まれ育った青森市から17歳の時に上京し、工場勤務などを経て30歳のころに盛岡に移住。健康器具販売の会社を興し「営業の先頭で必死に働いた」。5人を雇用するまで会社を拡大したが、不況や従業員の不祥事で7年ほど前に倒産。全財産を失い、妻とも離婚した。24年間納めた厚生年金は支給要件の加入年数25年に1年足りず収入もない。ハローワークで職を探したが「60代を雇ってくれるところはなかった」。

 路上生活していた09年春、生活困窮者の相談に乗る労働団体のイベントで生活保護を知り、困窮者を支援する市民団体「盛岡健康と生活を守る会」の助言で受給を始めた。

 「暮らしていけるのはありがたい。でも経済的な厳しさは増すばかり」と言う。昨年8月、政府は保護費のうち食費など「生活扶助」の最大10%削減に着手。男性も月約2000〜3000円減額された。「5日分の食費に当たる。消費税も物価も上がり、切り詰める部分はない」と嘆いた。

 財務省は保護費のうち家賃など「住宅扶助」を来年度の削減対象にしており、さらに減額が見込まれる。男性は「この2年間、貧乏者は切り捨てられていると思うことばかり。大企業とか経済対策とかではなく、政治は福祉に目を向けてほしい」と願う。

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