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<いのちと地域を守る>アーカイブ、後世に教訓/米ハーバード大・ゴードン教授に聞く

52年、米国ボストン生まれ。95年からハーバード大教授。98〜04年と10〜11年、同大ライシャワー日本研究所所長。専門は日本近現代史。
東日本大震災デジタルアーカイブの画面

◎デジタル情報網羅、風化防ぐ

 東日本大震災の教訓を記録し、次世代に伝えるため、国内外の研究機関などが震災に関する多様な情報のデジタルアーカイブ化を進めている。米国ハーバード大のライシャワー日本研究所は「2011年東日本大震災デジタルアーカイブ」を運営。河北新報の連載企画「わがこと 防災・減災」の英訳版も発信している。国際規模のデジタルアーカイブ・サイト作成を指揮した研究所前所長のアンドルー・ゴードン同大教授(62)に意義などを聞いた。(聞き手はデジタル編集部・矢嶋哲也)

 −デジタルアーカイブは震災から1年後の12年3月に公開されました。
 「震災後、日本にどんな支援をできるのか話し合いました。当時、デジタル情報が大量に発信され、さまざまな組織が保存を呼び掛けていました。その情報に網羅的にアクセスできるサイトを作ろうと考えたのです」

<ネットワーク型>
 −なぜデジタル情報を残すのですか。
 「現代は、災害に限らず大きな出来事、重要なプロセスが進行する際、その記憶や記録のかなりの部分がデジタル情報として保存される時代です。ある人が自分の過去を振り返るとき、あるいは後世の人が歴史を書くときなど、デジタル情報が残っていなければ、正しく考察できないのです」

 「デジタル情報の中には、ツイートなど後に残りにくく、消耗しやすいものがあります。われわれのアーカイブに保存していて、既に情報発信元のサイト上から消えた情報も少なくありません」

 −情報の多くが、米国のデジタル図書館「インターネットアーカイブ」や、日本の国立国会図書館「ひなぎく」、東北大の「みちのく震録伝」など、提携している別のデジタルアーカイブが集めたデータです。
 「研究所自ら集めたコンテンツは、震災体験談など約100件にすぎません。研究所では以前、日本の憲法改正論議に関するデジタルアーカイブを手掛けました。しかし、震災に関する情報量は多すぎ、単独で収集保存するのは無理でした」
 「そこで、情報を持つ別のアーカイブへのリンクを提供する、ネットワーク型アーカイブにしました。サイトにアクセスした誰もが、体験談やウェブサイトを登録できる参加型アーカイブという特長もあります」

<多くの利用期待>
 −国際規模でデジタルアーカイブを構築する意義は何ですか。
 「人間の介入による気候変動の時代を迎え、世界のどこでも未曽有の災害が起こり得るようになりました。国際的に防災・減災の意識向上を考える際、世界中からアクセスできるインターネット上に、世界規模でデータを集めたデジタルアーカイブがあると、きっと価値を持つはずです」

 −仙台市で3月、国連防災世界会議が開かれます。デジタルアーカイブへの関心も高まるのではないでしょうか。
 「アーカイブの情報は、将来の災害に備える教訓になります。特に、震災に見舞われた日本では、多くの人に利用してもらえると期待しています。会議では、教育現場でアーカイブの活用を呼び掛けるワークショップ開催も考えています」

 −「わがこと 防災・減災」の英訳にも協力してもらいました。英訳版は河北新報オンラインで順次公開中です。
 「『わがこと』は津波に襲われた人がどう行動したかという証言を、教訓として教えてくれます。英語圏の人々が読むと、震災当日どんな状況だったのか、記者の筆を通じて的確に分かります。被災者への感情移入の度合いも高まるでしょう」

【2011年東日本大震災デジタルアーカイブ】 世界中のパートナーが収集した震災関連のデジタル資料にアクセスできるネットワーク型アーカイブ。保存データは震災直後に被災地などで発信された80万件のツイートのほか、30万〜40万件の新聞の見出しデータベース、15万件の写真、3万〜4万件のウェブサイトのコピーなど約140万件。日本語と英語で表示する。URLはhttp://jdarchive.org/

【関連リンク】
わがこと 防災・減災 英訳版 http://www.kahoku.co.jp/special/spe1151/


2015年01月11日日曜日

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