男が男にレイプされる──。そんなことが、本当にあるのか? ところが“ある”のだ。米軍で日常的に起きており、被害者の過半数は男性である。ペンタゴンによれば、1日あたり38人の男性兵士がレイプ被害に遭っているという。米国版『GQ』が痛みに耐えて生き延びた元軍人たちにインタビューした。
Translation: Ottogiro Machikane
A WARSHIP is like a city-sprawling, vital, crowded with purposeful men and women-
軍艦はまるでひとつの都市だ。無秩序に区画が連なり、男たち女たちがきびきびと、せせこましく立ち働いている。そんな艦内には、あなたを友達や隣人ではなく、獲物としか見ない輩もいる。都市の暗闇がそうであるように。
スティーヴ・ストーヴィは25歳を迎えるや海軍入りした。世界を見てまわりたかったからだ。ミサイルフリゲート艦ゲイリーで通信兵を務めた最初の1年半は「人生最高の日々」だった。
1999年9月後半、ストーヴィの乗艦はハワイへと航行していた。“タイガークルーズ”という海軍の慣行で、展開終了を間近に控えた水兵の家族が艦に乗り込み、最後の行程を共にするのだ。ディズニー・チャンネルの同行取材番組のように、対空兵器や対艦兵器を水兵がどう扱い、艦内でどんな日常を送っているのかを、家族たちは肌で感じることができる。軍艦が西海岸に帰投する場合、その行程はパールハーバーからサンディエゴまでとなるのが通例だ。
帰投まで2週間を残すばかりとなった9月20日の朝、ストーヴィは物資を取ってくるように命じられ、艦内でも辺鄙な場所にある貯蔵区画におもむくと、そこで3人の男から不意討ちを受けた。黒いフードを頭から被せられ、喉を絞められ、尻を犯される。ことが終わると、ストーヴィは箱が積み上げられた場所に、死体のように放置された。彼は誰にも言わなかった。レイプ犯の顔はちらりとすら見ていないけれど、告げ口をすればやつらに殺されるに決まっている。彼はトイレに身を隠し、痛みとパニックの波が引くまで、歯を食いしばって耐えた。それから黙って持ち場に戻った。
父親の来艦が間近に迫っていなければ、自殺していたかもしれないとストーヴィはいう。それほど父親の到着は「奇跡的なタイミング」だった。「父さんの顔が見えた瞬間に、安堵感がどっと湧いてきた。あんな気持ちは、後にも先にも味わったことがない」と語ってくれた。
父と息子はそれから5日間を艦上で共にした。ストーヴィは、3人の暴漢が自分たちを監視しているに違いないと感じていた。「けれど、すべてを胸の内に呑み込んだ」のだという。「父さんに打ち明けるなんてできっこなかったから」。