栃木県 鬼怒川。そこにひっそりとたたずむのが「鬼怒川秘宝殿」です。昭和56年(1981年)に開館したこの秘宝殿でしたが、館内の老朽化、資金難を理由に2014年12月31日で惜しまれつつも閉館。そんな鬼怒川秘宝殿の最期の瞬間を目に焼き付けようと、昨年末(クリスマスイブ)に取材してきました。
バブル期には全国数十カ所以上あった秘宝館ですが、2014年3月に佐賀県「嬉野武雄観光秘宝館」が閉館し、さらに今回の「鬼怒川秘宝殿」の閉館によって、残すはついに静岡県の「熱海秘宝館」1カ所のみになってしまいました。
そもそも「秘宝館」とはなにか。Wikipediaによると、性風俗や人間の性・生物の性に関する古今東西の文物を収蔵した施設とのことで、いわゆる資料や文献などを展示する展示型のものと、鬼怒川秘宝殿や、熱海秘宝館のような機械仕掛けがあるようなエンターテイメント型の秘宝館に分類されるようです。
それでは、さっそく「鬼怒川秘宝殿」徹底リポートいたします。東宝で作られていた精巧な作りのセットや人形たち、懐かしい笑いにあふれるストーリーに注目です。
ちなみに鬼怒川秘宝殿は全館撮影OKなので心置きなく撮影できます。ただし、各コーナーがセンサーで動く仕掛けになっているので、館内の逆走は禁止。閉館前でお客さんが多く、みんな譲り合いながら撮影していました。
さてここから先は仕掛け部屋が現れてきます。1つ目。お化け屋敷かな? と思うレベルで暗いです。
お次は「造下野薬師寺別当暮色」コーナー。お経を読むお坊さんが現れます。でもよく見るとお坊さんの後ろで動く男女の姿。最後はお経を読んでいたお坊さんも・・・・!?
さてお次。「坂東武者出征前夜」コーナー。名前の通り、出征前夜の営みを人形と障子の後ろに映る映像で表現していました。女性の声がなんとも切なく響き渡ります。
そんな出征武者の切ないストーリーの次に現れるのが、「百花繚乱太閤幻夢」コーナー。はい、出ました信長様! タイトル通り、いろんな意味で絢爛(けんらん)豪華な作品です。
どの人形も美しい表情で恍惚(こうこつ)感があふれ出ています。老朽化が進んでしまったとのことですが、展示されている人形たちは年月を経て逆に麗しくなっているようにも感じます。
そして、次は温泉をのぞく女と、絡み合う男女の現場を描いた作品。
その他、春画の展示もたくさん。
そして、「エロスギャラリー」と名付けられた神話をモチーフにした像の展示コーナーなどが続きます。
次に現われる「ラブサイエンスコーナー」では、男女の性器官などについての説明や、秘宝館の定番48手の展示も。色合いがなんだかレトロです。
最後の展示コーナーは「実写アダルトビデオ上映館」!
売店のお姉さんによると、閉館のニュースが流れてからお客さんが増加したため、ほとんどの商品が売り切れ状態とのこと。先日まで閉館セールとしてアダルトビデオなどもセール販売していたそうですが完売。午前中に出した商品も昼前には売り切れてしまっているようです。
売店を抜けると出口前の休憩所。秘宝館定番のエッチなUFOキャッチャーがありました。
帰り際、受付の女性(館長の娘さん。美人です)にお話を聞いてみました。
「ここ最近はテレビで放映されたこともあり、お客さんが増えました。別れを惜しんでくれている方もいらっしゃって、本当にありがたいことに、お客さんから、館内の展示品を買いたいという声もあります。でも、老朽化が進んでいるものもあるので、渡しても問題ない展示品を引き渡す予定です」
客層について聞くと、「秘宝殿に来るお客さんは、入館できるのは18歳以上だけど、幅広かったですよ。ただ近年は、昔と比べて女性のお客さんが増えてます。最近は女性の方が活気に溢れていますね!」と笑顔で答えてくれました。
また、取材当日に来館していた40代の男性は、
「すごく寂しいよね。自分は鬼怒川秘宝殿に6回くらい来たことがある。最初に来たのは20歳くらいで、友達とワイワイ言いながら遊びに来たんだけど、その後もふらっと来たりしてて。老朽化しても変わらない良さってのがあると思うんだけどね。あ、でも自分の子どもは(秘宝殿に)近づけさせないけどね(笑)」
――と昔を思い出しながら語ってくれました。そして、鬼怒川秘宝殿”特製福袋5000円分”を購入して帰っていきました。
日光在住の女子大学生4人組(20歳)は、
「近所にあることは知ってたけど来たことはなかったです。なんか近づいちゃいけないような……(笑)。でもニュースとかを見て、最後だし見ておこっか! みたいな感じで来ました。写真とかも撮ったけど、さすがにシェアはできない!」
――と笑いながらコメント。
そして、奈良県から1人でやってきたという強者の女子大生(21歳)を発見。
「普段から珍スポットを巡るのが好きで、ニュースを見て行かなければと思って今朝電車を乗り継いで来ました。今日が冬休み初日、かつクリスマスイブという状況ですが、楽しかったです(笑)。感想は、これが昭和か! といった感じで、かんぴょう農家の人形劇のコントや、アダルトビデオ鑑賞コーナーのモザイクの荒さも面白かったです! 来れてよかったです」
――と笑顔で話してくれました。
今回、閉館とのことで、どれだけ閑散としているのか? と取材も不安だったのですが、うかがった12月24日は、カップルや友達同士、そしてソロプレイヤーなど、閉館を前にさまざまな想いで来館している人が絶えずいました。
卑猥(ひわい)な場所として一見けむたがられがちな秘宝殿ではありますが、古き良き日本が“性”をエンターテイメントとして作り出した特有の文化であることは間違いありません。残るは熱海の1館のみになってしまいましたが、当時をご存じの方も、そうでない方も旅行がてら足を運んでみてはいかがでしょう?
(イライザ)
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