佐賀県知事選、なぜ「保守分裂」選挙なのか?― 内山融・東京大学大学院教授
THE PAGE 1月11日(日)12時0分配信
佐賀県知事選は、自民党・公明党が前佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏を推薦する一方、農業関係者を中心とした地元勢力が元総務官僚の山口祥義氏を擁立するという保守分裂の構図となった。
この保守分裂が起こった背景にあるのは、20世紀後半の主流だった「従来の自民党政治」と、21世紀に入ってから目立ってきた「新しい自民党政治」の対立である。「従来の自民党政治」では、自民党は農業などの部門から支持を受ける一方で、見返りに保護や利益分配を行っていた。政策の形成も、族議員や各省官僚などが中心的な役割を担うボトムアップ的なものであった。このような政治のあり方は、1955年以降の自民党長期政権の下で定着していった。
しかしこうした政治は、1990年代の選挙制度改革や橋本行革を経て変わってきた。すなわち、小泉政権や現在の安倍政権に代表されるように、首相官邸主導のトップダウンで、市場原理を重視する新自由主義的政策が進められるようになった。これが「新しい自民党政治」である。
今回の佐賀知事選はこのような対立図式が表れた典型的な事例と見ることができる。樋渡氏は、トップダウン式の市政運営で市立図書館に民間企業を導入するなど、「新しい政治」を代表している。安倍政権の農協改革にも賛同している。こうした方法に違和感を持つ人々が、地元農業者などの利益を守るため山口氏を擁立し、保守分裂選挙となった。
この4月には統一地方選が予定されているが、こうした保守分裂図式は、佐賀に限らず他の自治体にも広がっていくかもしれない。
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内山 融(うちやま ゆう)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など。
最終更新:1月11日(日)23時55分
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