棄却──韓国・太平洋戦争犠牲者遺族会の補償請求裁判で判決


 

1991年12月の提訴から約10年の韓国・遺族会の補償請求裁判で、3月26日、東京地方裁判所713号法廷で判決が言い渡された。
「原告らの請求をいずれも棄却する。」と、きわめて残念な結果となった。ただ、軍隊慰安婦の事実・実態を認定し、原告たちはそうした「慰安婦」であったことを認めた。また元日本軍人、軍属、遺族についても個々人の事実認定を行った。(2001)
●一審判決文
 
 
 

▼9時40分──判決の法廷へ。ヤン・スニム名誉会長、キム・チョンデ会長を先頭にして、
東京地裁に入る韓国・太平洋戦争犠牲者遺族会裁判の原告、弁護士ら(camera-harada,s.)
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■ 社・(韓国)太平洋戦争犠牲者遺族会の訴訟「アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求事件」(原告40人、朴七封=パク・チルポン=代表)の一審判決が3月26日(月)10時より、東京地方裁判所713法廷で言い渡された。

1.原告らの請求をいずれも棄却する。
2.訴訟費用は原告らの負担とする。

  以上

判決は主文だけの朗読。3分足らずで法廷は閉じた。裁判官〔3人)の退廷での恒例「起立」もない。そそくさと「法服」はドアのそとに出てしまった。しばらく、原告たち、傍聴席はシンとした。

■ 判決後、11時より司法記者会で会見
■ 韓国・太平洋戦争犠牲者遺族会から、多くの原告たちが来日
■ 判決後、「判決を受けて・報告集会」を開いた。18:30〜20:45、早稲田奉仕園 小ホール

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あっけない判決でした。10年の、これが決着でした。
判継続中に、7人の原告が亡くなっています。遺影がむなしく法廷を見つめました。

ことばにならないものをひっかぶりながら、その日のうちに、年を重ねた原告たちや韓国・遺族会幹部の人たちと、弁護士、ハッキリ会は、控訴の方針をかためました。むらむらした気持ちを、このあとの「継続」行動につなぐことになります。

この戦後補償請求訴訟は、1991年12月に提訴以来10年目になります。これまで33回の口頭弁論が行われ、2000年1月31日に結審しました。韓国の元日本軍人・軍属、遺族がそれぞれ16人、元「慰安婦」8人が原告で、戦後補償問題を訴える大きな部分を担ってきた裁判です。なかでも元「慰安婦」の訴訟として最初であり(金學順=キム・ハクスン ハルモニ=97年12月死亡=ら)、当時提訴された元「慰安婦」訴訟では「最後の」一審判決となります。(フィリピン人、在日韓国人元「慰安婦」裁判ではすでに控訴審判決ずみ。中国、台湾は一審段階。)

この判決にあたり、韓国・太平洋戦争犠牲者遺族会からは、原告ら15人が来日し、判決を迎えました。日本の戦後責任をハッキリさせる会(通称・ハッキリ会)として行動をともにしました。

日本の「戦後責任」を明らかにするという意味でそのまま名づけた「日本の戦後責任をハッキリさせる会」(臼杵敬子代表)は、原告たちの証言、訴えの声をもとにして、「事実(真相究明)・責任・補償」の道筋をさぐってきました。「韓国・遺族会」の人たちとの「顔の見える関係」を大事にし、暗中模索ながら、手づくりの活動をつづけてきました。どんな組織も、どんな肩書きであっても、「個人参加のネットワーク」を貫きました。
目的は、被害者たちの課題に対して「解決すること」。他の政治的・組織的目的に曲げることを排してきました。
戦後責任・戦後補償運動で、「在日」軍属、BC級戦犯補償、香港軍票賠償グループなど、またフィリピン、在日元「慰安婦」補償(謝罪・賠償)請求支援グループとともに「戦後補償ネット」を発足させ、ともに社会的・政治的・法的な活動を展開してきました。自律的に、ゆるやかな連携をとって進んできたといえるでしょう。この長いつきあいについて、多くの方々に感謝いたします。

「教科書問題」がぶり返しています。国際的な視野のもとで日本の「責任」を自らどこまで果たし「未来」をみることができるか──この「3.26判決」の結果は、あらたな行動につないでいくほかありません。

【注】:
社団法人・太平洋戦争犠牲者遺族会 The Society for the Bereaved Families of Pacific War
梁順任(ヤン・スニム)名誉会長、金鍾大(キム・チョンデ)会長 。
旧日本軍軍人・軍属、遺族、元徴用者、元「慰安婦」の被害者団体 。全国に支部、会員22000人 。

1991年12月6日、東京地方裁判所に日本国を被告にして提訴。民事17部 。
アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求事件、原告40人 (朴七封原告代表)。
訴訟原告代理人は、高木健一 幣原廣 林和男 山本宜成 古田典子 渡邊智子 福島瑞穂 小沢弘子 渡邊彰悟 森川真好 梁文洙 各弁護士。

日本の戦後責任をハッキリさせる会は、この韓国・太平洋戦争犠牲者遺族会の裁判支援、対政府・国会などの行動をともにしてきました。裁判経過、その他のこれまでの活動については、つぎのホームページをごらんください。

http://www.zephyr.dti.ne.jp/~kj8899/hakkiri-kai.main.html