永遠のキーヨ! 一周忌にコロムビア音源がコンプリート!
昨年5月30日、惜しくもこの世を去られた尾崎紀世彦さん。
誰もが認める不世出のシンガーですし、最も権威のあった時代の日本レコード大賞と日本歌謡大賞をダブル受賞し、紅白も3回出場という輝かしい実績がありますが、テレビやラジオなどではいくつか追悼放送があっただけで、余計に悲しかったものです。いい内容だった金スマが延々延期になったせいもあるかもしれませんけど…。
暮れには、レコード大賞特別功労賞を受賞なさいましたが、あれは昨年お亡くなりになった方全員に贈られていたような感じでしたから、特別にクローズアップされたという感じはしなかったのですね。
CDにしても、限定盤や生産中止盤の再プレスはあったものの、追悼盤としての新編集は後期ソニー時代を中心にした好盤「GOLDEN☆BEST サマー・ラブ」(こちらで紹介)しかなく、未CD化音源も多数だったゆえに、少々残念に思っていたのです。
マスコミ嫌いの自由人だったからと言ってしまえばそれまでですが、キーヨの素晴らしさを再評価し、後世へと伝えるタイミングには違いありませんでしたからね。
しかし今年の一周忌には追悼盤として、80年にコロムビアに残した唯一のアルバムが「 風のグラフィティー[+6]
80年3月リリースのこのアルバムは、ビーバーエアコンのCMソングに起用され、久々のスマッシュヒットを記録したシングル「My Better Life/Only Yesterday」を含む全10曲。
なんと大野雄二さんプロデュースで、山川啓介さんが中心となって作詞を担当。作曲には80年代にテレビ主題歌で大ヒットを飛ばす木森敏之さんも参加するなど、当時隆盛を極めたニューミュージックよりも洗練されたシティポップスといえる世界が展開されています。
これに伴い、キーヨのボーカルも、全盛期のパワフルなスタイルから一新。肩の力を抜いたメロウ&アダルトな歌い方になっているので、今も気負いなく軽い感じで聴けるお洒落な1枚だと思います。
そして気になるボートラは、同年に出たこの次のシングル「明日への扉/ブルー・スカイ・イン・マイ・ハー」、キーヨ自身も出演したことがある83年の東映・特撮ヒーローもの「宇宙刑事シャリバン」から挿入歌「シャリバンVマーチ/星空の街を歩こう」、アニメ「ルパン三世」の関連企画で92年にリリースされたクリスマスアルバム「聖夜泥棒~LUPIN THE THIRD IN CHRISTMAS~」から 「クリスマス・エトランゼ」、そして中村泰士先生が2003年に発表したアルバム 「人生満喫」からちあきなおみのカバー「喝采」という6曲。コロムビアに遺した音源はこれにてコンプリートとなるそうです。
あとは、全盛期のユニバーサルと、その後にビクターの音源に未CD化が多く残っていますので、期待したいところですが、今回ユニバーサルから出るのは新編集盤ではなく、2007年に限定発売され、逝去後にひっそりと再プレスされていた4枚組の廉価・再発「 尾崎紀世彦の世界
ただ、あのBOXはキーヨ初の複数枚組CDであり、100曲近くのボリュームでとても聴き応えがあるのですが、ボーカリスト・尾崎紀世彦に焦点をあてたせいかテーマ別の構成。そのためオリジナルが非常に軽視されている印象もあり、時代を追って聴きたい人には不向きで、コアなファンにも不完全燃焼な内容なのです。
なので、個人的にはいまだにQ盤のオリジナルアルバムとベストを聴く方が多かったりして…。同じような思いをしているファンは多いと思いますので、これが好評を博し、ユニバーサルが中心となってアンソロジー的なBOXが検討されることを願っています。
(2013.3.18)