仏連続テロ:ユダヤ社会衝撃 イスラエルへ「脱出」加速も
毎日新聞 2015年01月10日 21時47分(最終更新 01月11日 01時15分)
【エルサレム大治朋子】パリ東部のユダヤ教徒向けのスーパーが9日に襲撃され人質4人が殺害された事件が、ユダヤ人社会に大きな衝撃を与えている。欧州各国では右傾化が進むなか、昨年夏のイスラエルとパレスチナ自治区ガザの戦闘に伴い、各地でイスラエル批判が拡大。反ユダヤ主義を掲げる暴力事件も相次ぎ、イスラエルなどへの「脱出」を目指すユダヤ人が急増していた。事件を機に、こうした波紋がさらに広がる可能性がある。
「今回の事件で、さらに多くのユダヤ人がフランスを去ることになるかもしれない。すでに私の所には襲撃を恐れるユダヤ人からの電話が数百件もかかっている」。ユダヤ系のフランス国会議員、メイル・ハビブ氏は9日、イスラエル・メディアに強い懸念を語った。
米ユダヤ協会パリ支部のロダン・ベンザケン代表も同日、イスラエル・メディアに「(事件は)我々にとっての(米同時多発テロ)9・11事件だ」と指摘し、世界各地のユダヤ人が受けた衝撃の大きさを強調した。
イスラエルのネタニヤフ首相は9日、オランド仏大統領と電話協議し、ユダヤ人関連施設への警備を強化するよう要請した。
欧州各地では数年前から、ユダヤ人を迫害したナチス・ドイツを称賛するような極右政党が台頭。特にイスラム系人口の多いフランスやドイツ、英国では、反ユダヤ感情の拡大が目立っている。
フランスでは、昨年夏に起きたイスラエルとガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘に伴い、各地でイスラエルの攻撃を「過剰」と批判する大規模デモが発生。約400人が「ユダヤ人に死を」と叫びながらユダヤ教礼拝所(シナゴーグ)や商店を襲撃する事件も起きた。
また、昨年5月にはベルギー・ブリュッセルのユダヤ博物館が、イスラム過激派組織「イスラム国」に参加していたアルジェリア系フランス人の男に襲撃され、イスラエル人の夫妻2人を含む4人が射殺された。2012年3月にも、フランス南部トゥールーズで、アルジェリア系フランス人のイスラム教徒の男がユダヤ人学校を襲撃し子供ら4人を殺害している。男はイスラエルがパレスチナの子供を殺害したことへの報復だと訴えた。
「ジューイシュ・クロニクル」のステファン・ポーラード編集長は「彼らはイスラエル政府を支持するユダヤ人を攻撃しているのではない。ユダヤ人だから襲うのだ」と指摘。ユダヤ人全体への無差別攻撃だと批判する。