【ワシントン=川合智之】宇宙ベンチャーの米スペースX社と米航空宇宙局(NASA)は10日、ケープカナベラル空軍基地(米フロリダ州)からロケット「ファルコン9」を打ち上げた。ロケットの再利用に向けて1段目ロケットを船上に軟着陸させる試験に初めて挑んだが、着地に失敗した。今後の試験で軟着陸に成功すれば、再び燃料を詰め、年内にも再利用ロケットの打ち上げを実現したい考えだ。
10日午前5時47分(日本時間午後7時47分)に打ち上げたファルコン9は、国際宇宙ステーション(ISS)に食料や実験機器などを運ぶ宇宙船「ドラゴン」の軌道投入に成功。切り離した1段目ロケットはエンジンを噴射しながら減速、大西洋上の専用船の甲板に降下した。甲板の大きさは縦91メートルで、横30~52メートル。
同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は同日、「ロケットは船に到達したが激しく着地した。今回は惜しかった」「船自体は大丈夫だが、甲板の一部設備は交換が必要になる」とツイッターに投稿した。同氏は事前に成功確率を「良くて50%」と予告していた。
スペースXは2013年、宇宙船を積まずに1段目ロケットだけを高さ744メートルまで上昇、着陸させる試験に成功していたが、今回の最大高度は80キロメートル。物資を運ぶ宇宙船を打ち上げた後、ロケットを船上で回収する試験は初めてだった。これまで1段目ロケットを減速して海にゆっくり落とす試験には成功していた。
通常のロケットは打ち上げ後に燃え尽きるか、海に落下するため再利用は難しい。同社は回収したロケットを繰り返し使うことで、現状6千万ドル(約72億円)の打ち上げ費用を将来100分の1に下げる計画。試験データを分析して次回以降の試験に生かす。
スペースXは02年創業。電子決済大手の米ペイパルを創業、電気自動車のテスラ・モーターズも経営するマスク氏がCEOを務める。マスク氏は将来の火星移住を目標に掲げ、ロケットや宇宙船の開発に取り組む。
米政府はコスト削減と宇宙市場拡大のため宇宙開発に民間の競争原理を導入する考えで、宇宙ベンチャーを積極支援している。スペースXは有人宇宙船などの開発を政府から受託し、安定した打ち上げの発注を受けることで低コスト化を進めてきた。同社は民間で世界最大となる週4台のロケットエンジンの生産体制を整えるなど、事業拡大を続けている。
一方、昨年10月末にはISSへの補給船を積んだ米宇宙企業オービタル・サイエンシズ社のロケットが墜落。打ち上げサービスの受注には高い成功率が不可欠で、民間宇宙開発は安全性の見直しを迫られている。
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