男子校出身だと未婚率が高く、短命な2つの理由
cakes 1月8日(木)15時8分配信
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| 『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法』石川善樹 |
男性は女性にくらべ、人との「つながり」を築くのが不得手だとされています。ハーバード大には「男子校に入らないことは、運動をするのと同じだけの健康効果がある」という説を唱える研究者もいるほどだそうです。
予防医学研究者の石川善樹さんが、国内外で行われた数多くの研究を例に挙げながら、健康にとっての「つながり」の重要性をおもしろく、わかりやすく解説した一冊、『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法』(マガジンハウス)よりお届けします。
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●日本人は真面目だから長生き?
性格と寿命をめぐる研究もアメリカではよく行われています。なかでもスタンフォード大学のルイス・マディソン・ターマン教授は1500人ほどの子どもたちを80年間以上追いかけるという鬼のような研究をしています。これはターマン研究と呼ばれる有名な研究です。
性格は大きく5つに分類されると言われています。
具体的には、開放性、勤勉性、外向性、協調性、神経症傾向であり、これはまとめて「ビッグ5」と呼ばれています。職務遂行能力とビッグ5は関連が深いので、就職試験などでの適性検査として用いられることもあります。
開放性は好奇心旺盛で新しいことにも心を開くオープンマインドな性格、勤勉性は自己統制力や真面目さを表す性格、外向性は社交的で外の世界に対して積極的に関わる性格、協調性は他人を思いやる優しさに満ちた性格、そして神経症傾向は不安や緊張が強い性格です。
ターマン研究では、このうち寿命ともっとも関わりが深い性格的な傾向は勤勉性であるという結論が出ました。それまでは開放性や外向性の方が健康的な性格であろうと考えられていましたが、その常識を覆したのです。
しかし改めて考えてみると、開放性が高くて外向的だと誘いに弱くてお酒を飲み過ぎることもあるでしょうし、「きっと大丈夫だろう」と根拠のない自信から無謀なことをして事故死するリスクもあります。
そういう意味では、勤勉な人は「運動した方がいいよ」とすすめられたら素直に運動しようとするでしょうし、「お酒はほどほどにした方がいいよ」と言われたらちゃんと言うことを聞くでしょう。食べ過ぎたり飲み過ぎたりしないし、あまり無謀なことをしないから死亡リスクも低くなるのかもしれません。
日本が世界有数の長寿国家であるのも、真面目で勤勉な国民性と関係があると考えられます。
●孤独な人は死亡率が2倍になる。
血圧、コレステロール値、喫煙、運動、遺伝といった病気のリスクと健康に関わると言われているファクターだけでは説明できない“何か”の正体とは何なのか。これまでに見てきたように、予防医学の専門家以外の心理学者なども加わって懸命に探った結果、ようやく結論めいたものに行き着きました。
それが本書のテーマである「つながり」なのです。
「つながり」の重要性を初めて明らかにしたのは、1979年にバークマンとサイムという研究者が行ったアラメダ研究です。
この研究は、アメリカ・カリフォルニア州のアラメダ郡が舞台。30歳から69歳までの男女数千人を対象に9年間追跡調査して、婚姻状況、友人や親族との付き合い、キリスト教会など宗教的活動、政治活動、ボランティア活動などと死亡率との関係を明らかにしました。
すでに触れたように心臓病予防をテーマに行われたフラミンガム研究は、人類が初めてビッグデータを活用した研究でした。当時はコンピュータも何もない時代でしたから、得られた膨大なデータをどのように活用し、どう分析したら良いのかというノウハウの蓄積がまだ不十分でした。
その後、ビッグデータの分析手法が開発されましたし、コンピュータという頼れる武器も手にすることができました。さらに医師のみならず、心理学者、人類学者、経済学者といった各分野のオールスターキャストが知恵を集めて、何が健康に効きそうなのかをあぶり出してみました。そこで得られた結論が「つながり」だったのです。
たとえば、アラメダ郡の住民に「婚姻しているかどうか」「家族や親しい友人との付き合いがあるか」「宗教活動をしているか」「その他の組織活動への参加があるか」という4つの質問をしたところ、社会的に孤立している人は、社会的なネットワークを多く持つ人と比べると男性2・3倍、女性で2・8倍亡くなりやすかったのです。この結果は、「つながり」について関心を持たなかった多くの医療関係者に大きな衝撃を与えました。
●男子校の出身者は未婚率が高く、短命である。
次はハーバード大学医学部の社会ネットワークの研究者であるニコラス・クリスタキス教授らの研究です。彼は「肥満は1600キロの隔たりを超えて感染する」というユニークな研究で知られていますが、他にも多くの興味深い研究をしています。それが「男子校出身者は短命である」という研究です。
おしゃべりでコミュニケーションが上手な女性たちと比べると、男性は人間関係を作るのがもともと下手です。そんな男性だけを集めた男子校という固定化されたコミュニティで育ってしまうと、コミュニケーション手段がワンパターンになり、卒業してそのあと大学生や社会人になってからの他者との「つながり」を作るのがとても不得手になるのです。
男子校で「同じ釜のメシを喰う」ような生活をしていると、男性同士の絆は強くなりそうですが、卒業して社会的に成功している同級生が出てくるようになると、そのコミュニティに居づらくなり、孤独な生活を強いられることもあると思います。「つながり」はその強さよりも、多様性が大切なのです。
多様な「つながり」による社会的な支援が得られないため、クリスタキス教授らの研究によると、男子校出身者は共学校出身者と比べて65歳以下で亡くなる可能性が高いということがわかっています。一方、女子校で行われた同様の調査では、共学校出身者との寿命の違いはありませんでした。
なぜ男子校出身者は短命なのでしょうか。クリスタキス教授は次の2つの理由を挙げています。
一つ目は、男子校出身だと女性と出会う機会が少なく、未婚率が高いという点。結婚こそは「つながり」であり、健康の源なのです。
二つ目は、男子校だと数少ない女性を争ってストレスが増えるという点。人生の早い段階からストレスを受けることは、後々まで健康に悪い影響を与えます。
そのうえで教授は「男子校に入らないことは、運動をするのと同じだけの健康効果がある」と指摘しています。
日本でも、明治大学の諸富祥彦教授が2010年に都内に通う大学生男女各100人に調査した結果では、共学校出身の男子学生に彼女がいる率は3〜4割だったのに、男子校出身者で彼女がいる率は1割弱に留まっていました。3倍から4倍も低いという結果が出たのです。
さらに共学校出身者の彼女は年下、同級生、年上とさまざまだったのに、男子校出身者では彼女の大半が年上でした。共学校出身者は女性との多様なコミュニケーションのスキルを身につけているのに、男子校出身者にはそれがないため、年上の相手にリードしてもらいながら交際しているのでしょう。
日本でもクリスタキス教授らのような研究を行うと、男子校出身者は未婚率が高く、短命であるという結論が出るかもしれません。
石川善樹
最終更新:1月8日(木)15時8分
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