変死体の薬毒物検査:全国で37%止まり 神奈川は5%

毎日新聞 2015年01月06日 15時00分(最終更新 01月06日 16時43分)

薬毒物検査実施率の上下位各5府県
薬毒物検査実施率の上下位各5府県

 警察庁の有識者研究会が11年にまとめた報告書によると、1998年以降、犯罪死の見逃しを判断された43件のうち11件は薬毒物が使用された事件で、7件は遺族が投与していた。また、その11件中8件は対象薬物を絞った簡易な検査でも薬毒物の使用が見抜けた可能性があると指摘。報告書は、解剖医の増員や検視体制の充実と並び、薬毒物検査の拡充を求めている。

 変死体の薬毒物検査実施の判断は現場に委ねられているのが現実で、京都府向日市で起きた青酸化合物による殺人事件では京都府警の捜査員の機転が奏功した。男性2人が殺害された鳥取連続不審死事件も、実施率が極めて高い鳥取県警の薬毒物検査が発端で、犯罪を見逃さないためには実施率の向上が不可欠といえそうだ。

 「何かがおかしい」。2013年12月28日深夜、向日市の無職、筧(かけひ)勇夫さん(当時75歳)が死亡したとの連絡を受け、現場を調べた捜査員は首をひねった。妻の千佐子被告(68)=殺人罪で起訴=が、筧さんと結婚して間もなかったことに加え、部屋から過去に結婚した男性の印鑑がいくつも出てきたからだ。

 府警の検視官は毒物混入を疑い、科学捜査研究所で血液検査するよう指示。青酸化合物の陽性反応が出た。京都府警の検査率は58.5%(13年度)。

 千佐子被告が以前交際していた大阪府貝塚市の男性は12年3月、バイクで走行中に転倒し死亡。京都での捜査進展を受け、大阪府警は保存していた男性の血液を14年5月に再検査し、同じく陽性反応が出た。京都府警の検視官経験者は「薬毒物検査や解剖をするかどうかの判断は非常に重い。一つ間違えば犯罪死を見逃すことになる」と指摘した。

 一方、薬毒物検査の実施率97.8%と全国一の鳥取県警は、白骨化したり焼死したりした変死体を除き、ほぼ全てについて実施。12年度以前の統計はないが、05年以降、検視体制の充実を図っており(現在計8人体制)、県警幹部は「印象としては従来、90%以上やっていた」と話す。

 鳥取市の元ホステス、上田美由紀被告(41)が強盗殺人罪などで死刑判決=上告中=を受けた09年の連続不審死事件では、薬毒物検査で被害者の遺体から睡眠導入剤が検出された。

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