変死体の薬毒物検査:全国で37%止まり 神奈川は5%

毎日新聞 2015年01月06日 15時00分(最終更新 01月06日 16時43分)

薬毒物検査実施率の上下位各5府県
薬毒物検査実施率の上下位各5府県

 ◇変死16万体 13年度警察庁調査

 犯罪の可能性を探るため、変死体の血液や尿などを採取して実施する警察の薬毒物検査が2013年度、全国の変死体の37.5%にしか実施されなかったことが警察庁への取材で分かった。また、都道府県警別の実施率には鳥取県の97.8%から神奈川県の5.5%まで大差があった。過去には、薬毒物検査を実施していれば犯罪を見逃さなかったとされるケースが相当数報告されており、専門家は実施率を高めるための体制づくりが急務だと指摘している。【岡崎英遠、村田拓也】

 ◇捜査員の勘、端緒に…京都の夫死亡

 広義の変死体は、医師が立ち会って病死と判断した以外の死体を指し、自宅で急死した場合なども含まれる。こうした死体は、刑事訴訟法に基づいて警察が検視し、犯罪の可能性の有無を調べる。

 薬毒物検査は、現場の検視官や解剖医が必要性を判断し、病院や警察の科学捜査研究所、民間検査機関で実施。青酸化合物やヒ素、農薬などの毒劇物の混入、鎮痛剤や睡眠薬の大量投与などがないか調べる。ただ、検視で死因が内臓疾患などと判断されれば、薬毒物検査を行わないケースも多い。

 警察庁が初めてまとめた薬毒物検査の集計によると、13年度に検査した変死体は全国で6万2932件。実施率は全体で37.5%だった。都道府県警別では、鳥取県や静岡県など7県が90%以上の変死体について実施したのに対し、神奈川県をはじめ、高知県、香川県、大阪府の実施率は1桁にとどまっていた。変死体の数が全国最多の2万件以上に上った警視庁(東京都)は平均より少し高い40.5%だった。

 法医学の専門家は、実施率がおおむね低い背景には、警察や大学に薬毒物検査に詳しい担当者が少ない上、多発する薬物中毒の捜査などに追われていることがあると指摘。簡易な検査でも1回8万円程度と費用が比較的高いことも影響している可能性があるという。また、13年4月施行された薬毒物検査の根拠法令である「死因・身元調査法」が、実施するかどうかの判断を各都道府県警の裁量に委ねていることが地域間格差につながっているとみられる。

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