娘の写真がさらされ、「自殺するまで追い込むしかない」 慰安婦報道の植村元朝日記者、ネットでの誹謗中傷明かす

2015/1/ 9 19:05
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   いわゆる従軍慰安婦の女性の証言を初めて報じた元朝日新聞記者の植村隆氏(56)が2015年1月9日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、自らの記事に対する批判に反論した。

   同日、植村氏は自らの記事を「捏造」と非難した週刊文春の報道をきっかけに脅迫などの人権侵害を受けたとして版元の文藝春秋などに損害賠償や謝罪広告などを求める訴えを起こしている。自らが「反日」だとして批判されていることについては「自分は愛国者だと思っている」などと話した。

支援団体が元慰安婦女性にヒヤリングしたテープの内容を記事化

自らが執筆した1991年の記事を手にする元朝日新聞記者の植村隆氏
自らが執筆した1991年の記事を手にする元朝日新聞記者の植村隆氏

   植村氏が非常勤講師として勤務する北星学園大学(札幌市)には、こういったはがきが届くという。

「出て行け、この学校から。出て行け、日本から。売国奴」
「日本でカネを稼ぐな。大好きな韓国に帰化して姑に食べさせてもらえ」

   大半がいわゆる「反日」批判だが、植村氏はこう反論した。

「しかし、私は反日ではない。私は日本が他のアジアから尊敬される本当の仲間だと思われる国になってほしい。そういう意味では、自分は愛国者だと思っている。学生に言っている。僕の学生は、韓国、中国、台湾から来る学生が多い。『もちろん、今日本で不愉快なことが沢山あるかも分からないけど、日本も良いところがあるし、やはり日本と隣国は大切な関係なので、是非日本で色々なことを学んでほしい』」

   植村氏に対する批判のきっかけになったのが、植村氏が1991年8月11日の朝日新聞大阪本社版の紙面に執筆した記事だ。記事では、ソウル市在住の金学順(キム・ハクスン)さん(当時68=1997年死去)が従軍慰安婦としての体験を支援団体に明らかにしたことを報じた。植村氏は金さんに直接インタビューしたのではなく、支援団体が金さんにヒヤリングしたテープを聴くことができただけだったが、慰安婦本人の証言が記事化された初めてのケースだ。金さんは91年12月に日本政府を相手取って戦後補償を求める裁判を起こしたが、死去後の04年に敗訴が確定している。

就職が決まっていた大学にメールや電話で批判が殺到

会見場は多くの報道陣が集まった
会見場は多くの報道陣が集まった

   週刊文春は、この1991年の記事について、2014年2月6日号で「『慰安婦捏造』朝日新聞記者がお嬢様大学教授に」と題するキャンペーン記事で批判。記事では、西岡力・東京基督教大教授が金さんについて、

「親に身売りされて慰安婦になったと訴状に書き、韓国紙の取材にもそう答えている。植村氏はそうした事実に触れずに強制連行があったかのように記事を書いており、捏造記事と言っても過言ではありません」

とコメント、植村氏を非難した。西岡氏は同様の主張を別の論文でも展開している。

   植村氏の説明によると、文春記事の影響で、就職が決まっていた神戸松蔭女子学院大学(神戸市)にメールや電話で批判が殺到し、就職話は立ち消えに。非常勤として勤務している北星学園大学にも抗議の電話が相次ぎ、その内容がネット上に拡散されたケースもあった。

   娘の写真がネット上にさらされ、「こいつの父親のせいで、どれだけ日本人が苦労したことか」「自殺するまで追い込むしかない」などと誹謗中傷が相次いだ。非公開のはずの自宅住所や電話番号もネット上に拡散された。

   植村氏は提訴の理由を、

「こうした、週刊文春の『捏造』というレッテル貼り、そして西岡氏の言説が、結果的にこうした状況を引き起こしたのではないかと思っている。言論の場でも手記を発表して反論している。それだけではなく、法廷の場でも捏造記者でないことを認めていただこうと思っている」

と説明した。訴訟は週刊文春の版元の文藝春秋と西岡氏を相手取って起こされ、(1)インターネットからの西岡氏論文の削除(2)謝罪広告の掲載(3)損害賠償として1650万円の支払い、の3点を求めている。

   西岡氏は文春記事の中で、植村氏の記事が「強制連行」があったかのような内容だったとして「捏造」だと主張している。ただ、植村氏の記事では、金さんについては、

「女性の話によると、中国東北部で生まれ、17歳の時、だまされて慰安婦にされた。2、300人の部隊がいる中国南部の慰安所に連れて行かれた」

と書かれているに過ぎない。植村氏はこれを根拠に、そもそも「強制連行」があったとは伝えていないことから「捏造」はないとしている。

西岡氏はリード文の「戦場に連行」根拠に引き続き「捏造」主張

   植村氏は「文藝春秋」15年1月号や「世界」15年2月号でも、同様の主張を展開しており、批判された西岡氏もすでに植村氏の「捏造ではない」という主張に反論している。

   西岡氏は「正論」15年2月号への寄稿で、植村氏の1991年の記事のリード文を問題視している。リード文の内容はこうだ。

「日中戦争や第2次大戦の際、『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』のうち、1人がソウル市内に生存していることがわかり、(後略)」

   このリード文について、西岡氏は、

「植村記者は一般論として慰安婦を説明したのではない」
「普通の国語力があれば、この文章は、単純に慰安婦を挺身隊と混同して書いたのではなく、彼女(編注:金さん)の経歴について書いていたものだとわかる」

と主張。金さんが「『女子挺身隊』の名で戦場の連行」の事実を記者会見や訴状では触れなかったとして、西岡氏は、

「本人が語っていない経歴を勝手に作って記事に書く、これこそ捏造ではないか」

などと、やはり「捏造」批判を展開している。

   植村氏の記事をめぐっては、朝日新聞が14年8月に掲載した検証記事と14年12月の第三者委員会の報告で、「挺身隊」の用語の間違いはあったものの、「事実のねじ曲げ」はなかったと結論づけている。

   さらに、朝日新聞社は、済州島で慰安婦が強制連行されたとする「吉田証言」は虚偽だったとして同証言に関連する記事18本を取り消しているが、植村氏は吉田証言に関連する記事は出稿、取材ともにタッチしていない。

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