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「モノ」の価値しか生み出せないサムスンに立ちはだかった壁

2014年通期に売上高が22兆円で、営業利益2兆7,000億円、営業利益率が12.3%の見通しを発表している企業となるとどのように評価されますか。トヨタが2015年3月期の通期で、売上高26兆5千億円、営業利益2兆5千億円、営業利益率が9.4%の見通しだといいます。トヨタより売上では少し劣るものの、高収益を稼ぎだしている巨大企業です。それがサムスンです。しかしそのサムスンもついに成長の勢いが止まり、ピークアウトしてしまいました。サムスンは、2014年10~12月連結決算で営業利益が前年同期比37.4%減のになるとの見通しを発表したことで、5四半期連続の減益となりました。2014年通期見通しでも、売上高が前年比10.2% 減と9年ぶりの減収で、営業利益も32.2%減と2011年以来の減益となります。

嫌韓の人たちのなかには、もうサムスンが終わったとネットに書き込んでいる人もいますが、終わったのはサムスンの成長の勢いであり、今でも日本の家電が束になっても、サムスンの稼ぎだす力、稼ぎ出す利益の足元にも及びません。しかし、そのサムスンも成長の限界を迎えてきていることは事実です。その原因は、稼ぎの柱であるスマートフォンやタブレット事業が不調になってきたことです。

サムスンのスマートフォンの出荷数量シェアの推移を見ると、2013年第3四半期の32.5%をピークに、突然シェアダウンしてきていることがわかります。2014年の第一四半期にフラッグシップ機のギャラクシーS5を投入したにもかかわらず、その効果がでず、2014年第3四半期にはシェアを前年同期の32.5%から23.8%にまで落としています。

サムスンのシェアが落ち、また上位5位以外のシェアが伸び、市場は寡占化ではなく、分散化が急激に進んできています。

サムスンシェア
データ元:IDC調査

その最大の原因は、スマートフォン市場も成熟期にさしかかってきたことです。IDCの調査では、2014年第3四半期のスマートフォン出荷台数は、前年同期の25.2%増といまだに成長分野であることは間違いないとしても、2013年の同時期の市場は41.6%も伸びていたので、それ以降は成長速度が鈍化してきています。

この伸びをかろうじて牽引しているのは途上国です。2014年には、途上国市場向けの出荷数量が、前年から32.4%伸び、グローバル市場の70%を超えました。逆に、先進国市場は、成長率が対前年で4.9%でしかなく、成熟期に入ったのです。主戦場は途上国に移ったことです。

そのために低価格スマートフォンで、中国勢などの新興メーカーが台頭してきます。それとともに、サムスンのシェアが奪われ始めたのです。

サムスンは市場での立ち位置を失いはじめています。低価格の普及価格帯では中国勢などの新興勢力、上位の価格帯ではアップルのiPhoneがあり、それまでの総合的なラインアップの強みがなくなり、競争力が低下してきました。

しかしサムスンが、スマートフォン市場で成長力を失ってきた根っこの理由は、日本の情報家電が世界市場で敗北していったのとまったく同じだと感じています。

つまり「モノ」の価値しか開発できないことによる限界です。

機能や性能を向上させることが、消費者にとって価値向上につながる時代がスマートフォン市場では終わってきたのです。製品のライフサイクルの成熟です。いくら機能や性能を向上させても、それだけでは、差別化としては効かなくなってきています。しかも、低価格の普及品でも消費者を満足させるものが増えてきます。

今日は、「モノ」の価値だけでなく、「コト」の価値、「イミ」の価値を創造し提供できてはじめて消費者が認める価値向上になる時代です。

「コト」の価値とは、どんな特別な新しい体験ができるかであり、それが生活習慣をどう変えるかです。「イミ」の価値は、それが消費者の人たちの価値観や文化、ライフスタイルをどう変えるかです。それらが合わさってブランドの価値となってきます。

しかし、サムスンの根っこにある発想は、優れた「モノ」を生み出し、規模で上回れば勝者になれるという工業化の時代の古いパラダイムそのもので、「コト」や「イミ」の価値を生み出す力が弱いのです。その極みが、ギャラクシーノートのサイドエッジという新しい曲面ディスプレイを搭載したことでした。それで新しい体験、つまり「コト」の価値につながると考えたのでしょうが、それは生活者には伝わらずキワモノのようになってしまっています。

今では、消費財の多くの分野と同じように、スマートフォンの「モノ」のイノベーション効果は次第に低下しはじめてきています。機能や性能が向上してもそのありがたみが薄れてきたのです。

そして「コト」の価値や「イミ」の価値を生み出すことの効果のほうが高くなり、それを担うのはOSやクラウドとつながるアプリといったソフトウェアやシステムです。つまり独自のOSを持たず、またアプリを売るプラットフォームもないに等しく、「モノ」の価値の視点だけで突き進んできたサムスンには限界がでてきたのです。

それで競争力を維持し、生き残って行ける、あるいは成長と利益が期待できる分野があるとすれば半導体などの部品産業になってきます。サムスンが突き当たった壁は、今後の日本の産業のあり方、あるいはマーケティングを考えるための重要な教訓を示してくれているのではないでしょうか。

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