名張毒ぶどう酒事件:弁護団「不当性を最高裁でも訴える」

毎日新聞 2015年01月09日 21時40分(最終更新 01月10日 02時40分)

名張毒ぶどう酒事件の経過
名張毒ぶどう酒事件の経過
再審開始を認めなかった高裁の決定を批判する鈴木泉弁護団長=名古屋市中区の愛知県弁護士会館で2015年1月9日午前11時54分、木葉健二撮影
再審開始を認めなかった高裁の決定を批判する鈴木泉弁護団長=名古屋市中区の愛知県弁護士会館で2015年1月9日午前11時54分、木葉健二撮影

 三重県名張市で1961年3月、女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」で、第8次再審請求の異議申し立てが名古屋高裁で9日に棄却された奥西勝死刑囚(88)の弁護団は、記者会見で「異議審で訴えた不当性を、最高裁でも継続して訴える」と、特別抗告を申し立てる理由を説明した。「検察側は未提出の膨大な証拠を隠し持っている」とも主張し、異議審に引き続き最高裁でも証拠の全面開示を求める方針。特別抗告は奥西死刑囚の誕生日の14日に行うという。

 記者会見は午前と午後の2回行われ、鈴木泉弁護団長は「裁判所は無辜(むこ)の救済として設けられた再審制度の本質を全く理解せず、それに反した審理、姿勢だった」と高裁を厳しく批判した。

 8次請求では、事件に使われたとされる毒物が農薬「ニッカリンT」ではないことを示す「重大な新証拠」を提出する予定だったが、その前に棄却決定が出され、異議も退けられた。鈴木弁護団長は「証拠を調べ尽くすことなく、命を奪うというのは正義に反する」と強い口調で非難し、「特別抗告せずに第9次再審請求を始める選択肢もあるが、問題のある8次請求の決定を容認するわけにはいかない」と説明した。

 奥西死刑囚の妹、岡美代子さん(85)は特別面会人を通じ「兄は命を削り、再審・無罪を訴え続けた。兄は絶対にやっていません」とコメントした。

 決定を伝えるため9日、八王子医療刑務所(東京都八王子市)で奥西死刑囚に面会した伊藤和子弁護士によると、奥西死刑囚は人工呼吸器を装着して声が出せないが、特別抗告すると伝えると、右手で伊藤弁護士の手を力強く握り、大きくうなずいたという。

 第8次再審請求では、名高裁刑事1部が14年5月、「第7次請求と同一証拠に基づいており、請求権は消滅している」などとして棄却した。弁護団は翌6月、同2部に異議を申し立てたが、この日の決定で木口信之裁判長は「無罪を言い渡すべき明白性や新規性はない」と判断した。【金寿英、駒木智一】

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