北海道新幹線:札幌延伸5年前倒し 建設費や用地見通せず

毎日新聞 2015年01月10日 14時33分(最終更新 01月10日 17時24分)

新函館北斗駅から札幌に建設が進む北海道新幹線の高架橋=北海道北斗市で、手塚耕一郎撮影
新函館北斗駅から札幌に建設が進む北海道新幹線の高架橋=北海道北斗市で、手塚耕一郎撮影

 北海道新幹線の新函館北斗−札幌間の開業時期を、これまでの2035年度から30年度に5年前倒しする政府・与党の方針が決定した。早期延伸を要望してきた経済界を中心に歓迎の声が上がる一方、建設費負担の繰り上げや用地買収は見通せておらず、議論の加速化が迫られている。【小川祐希、山下智恵、久野華代】

 ◇単年度負担増加

 道は札幌延伸を5年前倒しした場合、開業後5年間の経済効果を当初計画より400億円増の約5100億円と見込む。北海道経済連合会の大内全会長は「北海道と東北が一つの経済圏となり、観光やビジネスでの交流が大いに期待される」とのコメントを発表した。

 道や沿線自治体の建設費負担は、工期が短縮された場合も約2900億円と従来の試算のままだが、単年度では増える可能性がある。高橋はるみ知事は早期延伸を政府・与党に求めつつ、厳しい財政状況から負担軽減も求めていた。道新幹線推進室は「単年度でどの程度増えるかは分からない。予算全体の中で調整する」としている。

 ◇在来線の結論急ぐ

 札幌延伸後、在来線の函館線函館−小樽間(287・8キロ)はJR北海道から経営分離される。道や沿線15市町は第三セクターを設立して鉄道を残すのか、バス路線に転換するのかを12年度から協議してきた。札幌延伸の5年前倒しで、結論も5年早めて25年度ごろまでに出す方針だ。

 15年度末の新函館北斗開業時に江差線五稜郭−木古内間は三セク会社に経営分離される。道と沿線市町の負担額は、最初の10年間で23億円。採算の尺度となる輸送密度(1キロ当たりの1日平均利用者数)は五稜郭−木古内間が643人なのに対し、函館−小樽間はその6割。長万部−小樽間は貨物列車が走らないため、線路使用料の収入も見込めない。道交通企画課は「鉄道を残した場合、全国で一番経営が厳しい三セク鉄道になるのではないか」と話す。

 ◇取得難航の懸念も

 建設用地の取得が難航する懸念もある。発寒駅(札幌市西区)付近から札幌駅(北区)までの約8キロは、在来線と並行して新幹線用の高架橋を建設する予定だ。沿線にはマンションなどの大規模物件や住宅が密集するが、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は札幌駅直前まで地下トンネル化する案も捨てていない。また取得対象の土地も定まっていないため、市や同機構はこれまで積極的な周知をしてこなかった。

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