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Chikirinの日記

2015-01-10 通勤手当なんて廃止すべき

首都圏で働く多くの人が、片道でも 1時間、時には 1時間半や 2時間など、全員あわせれば膨大ともいえる時間を通勤に費やしてる。

往復だと 2時間から 4時間にもなるし、混み方も尋常じゃない。

座れないとか人とぶつかるってレベルじゃなくて、「なんでこんな他人と、ここまで密着しなくちゃいけないわけ?」みたいな状況だし、

ヒールで踏まれたり、コートに口紅付けられたり、他人の汗が肌についたり、ほんとに気持ち悪い。妊娠してる人や足が悪い人などは、身の危険を感じることもあるはず。


この状況を悪化させてるのが、会社が通勤手当を払うっていう制度です。

たとえば、こういう状況の時(↓)、

A) 会社から 2駅の A駅近くに住むと、家賃は 10万円だが、通勤定期代は月 3千円、通勤時間は 15分


B) その駅から 10駅(合計 12駅)離れた B駅近くに住むと、家賃は 8万円になるが、通勤定期代は 1万円、通勤時間は 1時間 5分になる

もし会社が通勤手当を支給すると、B駅在住の方が実質的な生活費が 2万円増えるんだよね。(両方とも通勤定期代の負担はゼロ。ただし家賃負担が B駅選択の方が 2万円安いため)


もちろん A駅の方が通勤は圧倒的にラクなので、「 2万円より、人生の時間と気持ちよさの方が大事」な人は A駅を選びます。

でも実際には、「 2万円も生活費が増えるなら、月に 44時間という拘束時間は喜んで差し出す!」という人も多い。(一日 1時間×往復×月 22日の出勤の場合)


ちなみにそれって、時給 454円で、毎日 2時間、通勤電車に乗るというアルバイトをしてるようなもので、

通勤ラッシュに乗ることが必須の職場というのは、「週休 2日、一日 8時間勤務、基本給 xx万円、ただし毎日 2時間は、時給 454円で満員電車に乗るというアルバイトをすることが条件」って会社なんだよね。

「本来の仕事」と「通勤電車に乗る」という仕事が、抱き合わせ販売されてると考えればいい。


★★★


当然、「そんなアルバイトしたくないです」という人もいるわけで、

てか、月44時間 = 年間 528時間 = 一日12時間のフリータイムがある 44日間、に相当するんだから、「その時間は別のことに当てたいです」という人もおり、そういう人は、

・狭くていいから会社のすぐ近くに住む

・フリーランスになる

・出勤時間が遅い業界や職種に就職、もしくは転職する(時間は同じだが混まなくなる)

などの問題回避行動を、個人的に採用します。


でも、全員がそんなことできるわけじゃない。だからやっぱり、「通勤ラッシュをなんとかする」っていう方向で、みんなが考えるべきなんじゃないの? とも思う。

みんなって誰だって?


政府であり、企業であり、鉄道会社です。そしてもちろん、ひとりひとりの個人です。


★★★


まずは通勤手当を止めたらどうなるか。Bさんの会社が、通勤手当の2万円を給与として払えば、Bさんは間違いなく、もっと近くに住もうと考えます。

会社の負担額も Bさんの生活費の総額も全く変わらないのに、Bさんの通勤時間は短くなるんです。

これは、社員を遠くに住ませるための通勤手当という制度を廃止すれば、全員が得するってことを意味します。会社だって、社員が朝から過酷なアルバイトで一仕事終えてから出勤してくるなんて、望んでるわけじゃないでしょ。


厳密に言えば税額が異なるとか細かい話はあるけど、んなもん、変更したらいいじゃん。「税額が違うから、通勤手当を給与に振り替えるのは無理!」とかいう(屁)理屈をいう人って、

・問題を問題だと認識する能力が欠如してる

・問題を解決できない理由を列挙するのが、大好きかつ得意である

・つらいことを我慢するのも趣味である

・お上が決めたことは、絶対に変更すべきでないと思ってる

のどれかだと思う。


あとね、この話をするとすぐに「通勤時間は読書が出来て有意義」とか言い出す人がいるんだけど、そういう人って、

・自分の手の届かない場所にあるブドウは、すっぱいブドウであると考える性格である

・自宅が汚く、通勤電車よりも不快な環境に陥っている

・カフェなど、通勤電車の中より読書に向いた場所の存在を知らない

のどれかなんでしょう。


税の扱いなんて、それで問題が解決できるなら変えればいい。都心に安い住宅が少ないとかいうけど、それもニワトリ卵です。渋谷のベンチャーに勤める若い人たちが渋谷周辺に住もうと考えるから、その周辺に単身者用の賃貸住宅が増える。

都心なんて高層化すれば、いくらでも床面積は増やせるんです。東京の都心部なんて低層住宅の建設は規制すべきで、早々にマンハッタンと同じくらいの高層化率を実現すべきだよね。


あと良く聞く反論は「単身の人にしか、近くに住むのは無理」って意見なんだけど、コレも全く理解できません。

なんで夫婦共働きだと、単身者にできることができないの? ふたりで家賃を負担すれば、ひとりで部屋を借りるより、ひとりあたりの家賃は確実に低くなるのでは? ふたりで遠いとこから通勤なんてしたら、二人分あわせて倍の時間が無駄になってるわけだし。

それに、子育て中の共働き夫婦こそ、時間がものすごく貴重なんじゃないの? 家賃が割高でも会社の近くに住むのは、「お金より時間が貴重」って人にこそ合ってるスタイルなんだから、ほんとは単身者より子育て世代の方がメリットは大きいんだよ。わかってる?


★★★


鉄道会社側で言えば、通勤定期の割引率も問題。通勤定期の割引率を下げれば、企業側も全額補助するのがつらくなり、「社員には、もっと近くに住んでほしい」という方向で、知恵を絞り始める。

いまだってチャリ通勤の手当てを出す会社や、近くに住む人に手当を出す会社もあります。でも通勤定期が高くなれば、ワークライフバランス大流行の昨今、会社だって残業代を 1時間減らすのと、通勤時間を1時間(片道 30分)減らすという両方の選択肢を使いたいと考え始めるはずなんです。


そもそも今は、どこの業界でも人手不足が半端ない。しかも、これから日本の生産人口はどんどん減っていく。政府は「女性や高齢者にもっと働いてもらおう」という方向でいろいろやってるけど、

今既に働いてる人の、無駄になってる時間を解消するだけでも、全体としてはものすごい有意義な時間が捻出できる。たとえば通勤に 2時間かかってる男性が、それを30分にできたら、残りの 1時間半は家事や育児の分担に回せる。

保育園に迎えに行き、夕食の買い物をして料理をする。一時間半って、それだけのことが可能になるほどの大きな時間なのに、今はそれが「電車の中」で浪費されてるんだよ。


子育て中のお母さんだって、通勤時間が「チャリで 15分」だったら働ける、という人はたくさんいる。だけど片道 1時間といわれるから、職場復帰も、断念せざるを得なくなる。

もちろん高齢の人にとっても、通勤不要なら働いてもいいけど、60代になってから、あの電車で通勤してまで働きたくないって人は多いでしょう。

女性と高齢者の力で労働力不足を解消しようと提言する人も多いけど、そういう人達がまったくこの問題(通勤時間の問題)に触れないのは、ちょっと想像力が乏しすぎる。



大事なことは、

・問題を問題と認識し、

・問題を解決するためにはなにをすればいいのか

という方向で思考することです。


問題を「仕方のないこと」「我慢しよう」と考えてしまうと、世の中が進歩しない。先日の 通貨のエントリ でも書いたように、面倒なこと、理不尽なこと、大変すぎることに関しては、「これってちょっと変じゃね?」って声に出していいましょう。

そして可能なら、個人としてどんどんそれらを避けましょう。


みんながそうすることが、問題を解決する方向への道につながるのです。


そんじゃーね!


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