教科書会社の「数研出版」(東京都)は、現在高校で使われている公民科の「現代社会」と「政治・経済」の教科書計3点から、「従軍慰安婦」と「強制連行」の言葉を削除する。昨年11月に記述の訂正を文部科学省に申請し、12月に認められた。4月から使用される教科書に反映される。

 記述を訂正した教科書は「現代社会」2点と「政治・経済」1点で、計4カ所の記述。「誤記」を理由に、文科省に訂正申請があった。

 現代社会は、「強制連行された人々や『従軍慰安婦』らによる訴訟が続いている」とあった記述を、「国や企業に対して謝罪の要求や補償を求める訴訟が起こされた」などと訂正した。

 政治・経済の教科書では、「戦時中の日本への強制連行や『従軍慰安婦』などに対するつぐないなど、個人に対するさまざまな戦後補償問題も議論されている」との記述を、「韓国については、戦時中に日本から被害を受けた個人が、謝罪を要求したり補償を求める裁判を起こしたりしている(戦後補償問題)」と訂正した。

 数研出版の教科書からは「従軍慰安婦」と「強制連行」の文言はなくなるという。同社の担当者は朝日新聞の取材に対し、「訂正した理由などはすぐには答えられない」と話している。

 文科省は昨年1月、小中高校の教科書の検定基準を改定し、近現代史について政府見解を書くことなどを求めた。現在検定が進められている中学校の教科書から適用される。現在使われている教科書の訂正は、検定基準に照らして判断するわけではなく、主に事実関係が確認できれば承認される。