BOX

ボックス(ティッカーシンボル:BOX)が新規株式公開(IPO)ロードショウをキックオフしました。

ボックスは企業向けのコンテンツ・コラボレーション・プラットフォームを、ソフトウェア・アズ・ア・サービスとして提供している企業です。

同社は現在、4万4千社の顧客を持っており、ゼネラル・エレクトリック、トヨタ、ベクテル、アメリプライズ、バイアコム、イーライ・リリーなど、あらゆる業種の企業に採用されています。

昔、企業はビジネスを行う上で管理することが必要となる顧客データやコンテンツを自社のIT機器を購入し、自社内で保管していました。そこではEMC製のストレージ・ハードウェアに加えて、サーチ・アプライアンス、セキュリティ・ツール、カスタム・アプリケーションなどが必要でした。しかしデータの保管、管理の業務はどんどん肥大化、複雑化しており、個々の企業がそれらを維持するための継続投資は莫大な負担となっています。さらにドキュメントやファイルを社外の取引先や下請けなどとやりとりする際の煩雑さも増しています。

ボックスは先ず顧客企業のデータをクラウド・ストレージのサービスを提供することで預かり、そこへコンテンツ共有や詳細な使用許可やセキュリティ機能を付加してゆくことで、個々の企業の柔軟性に欠けるデータ・サイロを作ってしまわない方法を提案しました。

このようなソフトウェア・アズ・ア・サービス型のビジネスは、すでに色々な企業によって押し進められています。CRMではセールスフォースがその例ですし、人事ソフトではワークデイが同様のサービスを提供しています。ERPはネットスイート、ITサービスはサービスナウが代表企業です。

つまりボックスはデータ・ストレージで上記の各企業が行っているのと同じことをやろうとしているわけです。

我々の日々の業務が、出先からモバイルでデータにアクセスする必要が増え、よりグローバルになり、以前より高度なセキュリティ・リスクに晒されてきていることから、(このままではIT投資負担が手に負えなくなる。この際、クラウド・ストレージを導入しようか?)と考える企業が急増しています。それらの企業がデーターセンターを統合する際、並行して試験的にボックスを導入するという例が増えているのです。それらの企業は、一定のテスト利用期間を経た後、課金サービスに移行中です。こうして現在、フォーチュン500の大企業のうち48%がボックスを使用しています。

ボックスのサービス上で、5万2千のサードパーティー・デベロッパーが色々な付帯的なサービスや機能性を追加しています。

こうして顧客がコンテンツを一回作っただけで、だれでもシェアできるようになれば、コラボ能力が向上するだけでなく、後々のデータ管理、ガバナンス、コンプライアンス、セキュリティ、アクセス・パーミッション、エンクリプションなどにまつわる頭痛の種が解消します。

なお、ボックスはコンシュマー向けサービスであるドロップボックスなどとは殆ど競合していません。なぜならコンシュマー向けサービスは、スケーラビリティ、セキュリティ、ガバナンスなどの面で大企業のスペックを満たしてないからです。

ボックスのサービスはもともとフリー・サービスとして顧客に使ってもらうところから始めました。その関係で最初は「持ち出し」になります。実際、損益計算書は醜悪です。2010年から法人向けセールスを雇いはじめ、次第にサブスクリプション・モデルを確立してゆきました。

現在の顧客リテンションは95%です。2014年の売上高は1.24億ドル(+83%)で、直近の売上ランレートは2.25億ドルです。

費用の中で最大の項目は営業費用であり、これは売上高よりも大きいです。つまり大赤字ということ。しかし顧客獲得に必要な費用は今後漸減すると考えられるので、ゆくゆくは黒字化を目指しています。

なおCEOのアロン・レヴィーはユニークな若手の経営者としてちょっと有名な人です。ワークデイなどの他社と比較すると経営陣の陣容は貧相です。

ボックスはニューヨーク証券取引所に上場される予定で、ティッカーシンボルはBOXです。今回発行株数は1,250万株で、全て新株です。初値設定は11~13ドルで、ロックアップ期間は180日です。幹事構成はモルガンスタンレー、クレディスイス、JPモルガンとなっています。