寒くしていると風邪が悪化するメカニズムを解明 ーPNAS
風邪の原因とされるウイルスが、寒い環境下において増殖しやすくなることを実証した研究結果が、イェール大学のグループから発表されました。この研究成果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されています。
一般的な風邪は、ライノウイルス(Rhinovirus)に感染することで発症すると考えられています。このウイルスは、体内よりも、鼻腔のような比較的に低い温度環境下で増殖が活発になることが知られていましたが、その背景にあるメカニズムについては明らかになっていませんでした。
今回、イェール大学のEllen F. Foxman氏らは、ライノウイルスに感染したマウスから気道上皮細胞を採取し、体内温度に近い37℃の場合と、それよりも低温の33℃とでウイルスに対する免疫反応がどのように変化するか調査。その結果、後者の方が免疫反応が低下し、ウイルスが感染しやすくなることが明らかになったとのこと。
この実験ではまた、温度の変化が、ウイルス自体よりもむしろ体の免疫反応に影響を与えていることを強く示唆する結果も得られたとのこと。すなわち、低温下においては、本来ウイルスの侵入を感知するはずの細胞(の表面にあるレセプター)の働きが鈍ることで、ウイルスの増殖が止められなくなり、その結果として風邪が悪化するものと結論づけています。
今回の研究結果はマウスの細胞を使ったものですが、ライノウイルスは多くの人の体内に常在している(普段は免疫反応で抑え込んでいるため発症しない)と言われていることから、人間でもマウスと同様の傾向を示すことが考えられるそうです。
「風邪には暖かくして寝るのが一番」というのは良く言われていることですが、科学的にもそうした言い伝えは正しかったということになりますね。
[PNAS via Sciencedaily]
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著者
企業の研究所でR&D業務に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。ソース明示とポイントを押さえた解説を心がけてゆきたいと思います。
去年はマスクをつける時期が遅くなって風邪をひいた。
「何度まで下がったらつける」と決めといた方がいいんだろうな。