本記事は12月15日付フィスコ企業調査レポート(伊藤忠エネクス)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 浅川 裕之
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M&Aや事業提携に対して積極的な「攻めの経営」
伊藤忠エネクス<8133>は伊藤忠商事グループ内でエネルギー分野の中核を担う、エネルギー商社。産業向けの燃料販売から最終消費者向けのガソリン、LPガスや各種機器類の販売まで、エネルギーをキーワードに、幅広く事業を展開している。
同社はM&Aや事業提携に対して従来から積極的で、いわゆる「攻めの経営」をモットーとしている。同社の「攻めの経営」は、すべての事業部門において、大規模なものから小規模のものまで、様々な施策がなされているが、そのなかでも2015年3月期において注目された動きは、自動車ディーラー事業を手掛ける大阪カーライフグループ(OCG)の買収であり、新車販売から、車検・中古車販売といったメンテナンス事業も手掛けている。OCGは大阪府下唯一の日産系有力ディーラーだ。サービスステーション運営を中心にカーライフ事業を手掛ける同社と相関が強く、連結収益への直接貢献と、他の自動車関連事業へのシナジー効果の両方が期待される。
同社の「攻めの経営」のもう一つの注目点は電力・ユーティリティ事業だ。2016年にも到来が予想される電力小売りの全面自由化に備えて、自社の発電能力の増強に加えて、他社とのアライアンス強化を進めている。すでに王子ホールディングス<3861>との合弁会社設立が発表されているが、現在はここに北海道ガス<9534>が加わって北海道をターゲットにすることが検討されている。また、一部の報道によれば、電力会社と合弁での石炭火力発電所の新設も取りざたされている。
足元の事業環境は決して順風とは言えない。2015年3月期上期(2014年4月-9月)は、消費増税、天候不順、原油価格の下落、急激な円安などの外部要因の影響で、同社が扱う石油製品類は全般に需要量が減少した。同社の収益構造は、価格と数量の両方の影響を受けるが、利益に対しては数量の影響がより大きく出る傾向にある。それにも拘わらず、同社の今上期決算は実質的には全利益項目で増収増益となった。この大きな要因として上記の「攻めの経営」の効果がある。
Check Point
●事業構造の変革の原動力はM&Aで、成長の歴史そのもの
●前年同期の特殊要因による反動減を考慮すれば実質的に増収増益
●冬季の暖房需要が強いため下期偏重型の季節性を有する
会社概要
事業構造の変革の原動力はM&Aで、成長の歴史そのもの
(1)事業の概要
同社は2001年に現社名に変更するまでは伊藤忠燃料の社名で、石油製品流通業界で大きな存在感を見せていた。2000年代に入ってからは社名だけでなく事業構造においても大きな変革を推進してきた。その変革の原動力はM&Aである。M&Aは、今では同社のDNAとも言えるほどに全ての事業分野において、様々な規模のものが実行されてきた。同社の成長の歴史はM&Aの歴史でもある。M&Aには当然、リスクも伴う。積極的にリスクを取りながらも大手エネルギー商社としての長年の知識と経験を活かして、巧みに数々のM&Aを成功へと導いてきたところに、同社の「攻めの経営」の真価があるといえる。
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