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【関西の議論】
先の大戦タブー視がはばんだ「英霊の帰還」 遅きに失する戦没者の遺骨収容…ようやく「国の責務」として始動
なぜ、こんなに時間がかかったのか。「政治家の怠慢もあるが、私たち国民も触れたくないものとして、あまりに過去を振り返らなさすぎた」。ジャーナリストの笹幸恵さん(40)は指摘する。
日本では戦後、先人の行為をやみくもに否定するような「戦後教育」が長らく続いた。先の大戦がタブー視され、戦没者への追悼すら口にしにくいような環境が続いてきた。
政治状況をみれば、二大政党の「55年体制」が続いた。その中で「戦争は二度と起こしてはならない」という論調への気兼ねもあったのか、自民党は遺骨収集に関して「責任政党」としての役割を果たしてこなかったという背景がある。
国や家族を守るために戦地に赴いた兵士らは「戦死したら靖国神社にまつられる」という国家との〝約束〟を信じて戦った。その思いにこたえるのは国として当然のことだ。
ようやく政府主導で前進しようとしている遺骨収集事業。笹さんは「遅きに失する感は否めないが、これからが本当のスタート。どこで区切りをつけるのかを念頭に置きながら注意深く進めてほしい」と注文をつける。
掛け声だけで終わらせてはならない。