政府が今年度の補正予算案を閣議決定した。昨年末に決めた緊急経済対策に基づき、国費で約3・5兆円を投じる。

 「地方関連や消費喚起など、経済の弱い部分に的を絞った」「財政再建に配慮した」と強調する。確かに、地方活性化と生活支援を狙った2種類の交付金を設け、公共事業は災害復旧と緊急防災に絞った。財源は今年度税収の上振れ分などを充てて国債の追加発行を避けたうえ、補正では8年ぶりに当初予算での発行額を減らした。

 しかし、手放しで評価するわけにはいかない。

 例えば、エネルギー価格への対策だ。中小のトラック事業者や漁業者向けに手厚い補助を積んだ。円安の負の影響を受けているのは確かだが、一方で原油価格は大幅に下がっている。今春の統一地方選もにらんだばらまき色が濃い。

 さらに問題なのは、緊急対策と言いながら、省庁が毎年度の当初予算編成で要求している「お決まり項目」があちこちに顔をのぞかせていることだ。

 「地域の産業振興」では、港湾の競争力強化(国土交通省)や農林水産物の加工・販売まで手がける6次産業化(農林水産省)、中心市街地再生(経済産業省)などが並ぶ。「安全・安心」では、捜査力の強化(警察庁)や情報収集衛星開発、国産ロケットの高度化(内閣官房、文部科学省)といった具合だ。

 それぞれ、大切な施策ではあろう。関係省庁は「対応を急ぐ必要があるからこそ、補正予算に盛り込んだ」と説明する。

 しかし、実態は異なる。本来なら当初予算に計上するはずだった分、あるいはその一部を補正に回し、総額を確保する「抜け道」になっている。

 国の借金総額が1千兆円を超えるまでに財政を悪化させてきた大きな要因が補正予算だ。当初予算の編成では、歳出の総額に何らかの枠を設けるなど、それなりに目配りしてきた。ところが補正予算にはそうしたしばりや本格的な査定もなく、金額ありきで作業が進む。この構造にメスを入れない限り、財政再建など夢のまた夢だろう。

 今回の補正でも「緊急対策」としてうなずける項目はある。保育所建設の加速や学校耐震化、省エネ・再生エネルギー対策、御嶽(おんたけ)山噴火を受けた火山観測体制の強化、危険ドラッグやエボラ出血熱への対応などだ。

 補正はこうした施策に絞り、余った財源は国債発行を減らすために使う。予算の基本に立ち返り、補正を「抜け道」としない改革を急がねばならない。