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 政府は8日、途上国援助(ODA)の基本方針を定めた今のODA大綱に代わる「開発協力大綱」を自民、公明両党の関係部会に示し、了承された。安倍内閣は来週にも閣議決定する。これまで制限してきた他国軍への支援を、災害救助など非軍事の分野に限って解禁する内容だ。日本がODAを始めてから60年あまり、軍への支出を一切してこなかっただけに、大きな転換となる。

 政府がこれまでODAを他国軍に一切使わなかったのは、1992年の最初のODA大綱で記した「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」との原則を03年の改定時にも維持し、厳しく運用してきたからだ。

 だが、安倍政権は13年に定めた国家安全保障戦略で「積極的平和主義に基づきODAを戦略的に活用」すると明記した。安倍政権の外交・安全保障政策にとって、新大綱は集団的自衛権の行使容認や武器輸出三原則の撤廃に並ぶ「3本目の矢」(外務省幹部)と位置づける。

 新大綱は、現大綱の原則に「相手国の軍または軍籍を有する者が関係する場合には、その実質的意義に着目し、個別具体的に検討する」との文言を加え、他国軍への支援を可能にした。

 ただ、支援の対象を「民生目的、災害救助など非軍事目的の開発協力」とも規定。軍に武器ではない物資を送ったり、軍人に民主制度の研修を実施したりすることはできるようになるが、武器の提供やODAで造った施設の軍用化、軍事関連の技術支援は引き続き禁じている。

 ただ、他国軍に提供した物資・技術は、その国の使い方次第で軍事転用されるおそれもある。昨年11月にあった公聴会では、参加者から他国軍への支援は「軍事転用されたかどうかの追跡調査が難しい」「相手の軍事費の肩代わりをODAでやることになる」といった懸念が示されたが、新大綱には転用を防ぐ具体策は盛り込まれなかった。(広島敦史)