脳にたまってアルツハイマー病を起こす異常なタンパク質「タウ」を減らす抗体を大阪市立大の富山貴美准教授(脳神経科学)のチームが開発し、マウスでの記憶障害の改善に成功したと9日、米神経学協会誌電子版に発表した。チームは治療薬づくりにつなげたいとしている。
チームによると、アルツハイマー病はアミロイドベータという物質の影響でタウがたまり、神経細胞が死んで記憶障害などをきたし、発症する。タウは多数のアミノ酸がつながってできており、40カ所以上でアミノ酸がリン酸化していることが分かっている。
チームはあまり研究が進んでいない413番目のアミノ酸のリン酸化に注目。このアミノ酸にくっつく抗体を開発した。遺伝子操作で人のタウを持ち、記憶障害を起こしたマウスに1週間に1回、1カ月間投与すると、脳の異常なタウを減らし神経細胞死を防げた。
マウスを泳がせ、休むための足場をどれだけ早く見つけられるかで記憶力を確かめる実験では、記憶障害が改善した。
アミロイドベータが蓄積すると、アルツハイマー病を発症する10~20年前に脳内に老人斑ができ始める。老人斑が検出された時点でアミロイドベータを減らす投薬を開始する研究が進んでいる。発症に直接影響するとみられるタウを標的にした薬の開発も注目されており、富山准教授は「将来は両方の薬を併用することで予防したい」と話す。〔共同〕
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