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介護報酬見直しへ 報告書まとまる
1月9日 19時29分

介護報酬見直しへ 報告書まとまる
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介護サービスを提供した事業者に支払われる介護報酬の見直しについて、厚生労働省の分科会は、深刻な人手不足を解消するため、一定の条件を満たした事業者を対象に報酬を上乗せすることなどを盛り込んだ報告書をまとめました。

3年ごとに行われることし春の介護報酬の見直しに向けて、厚生労働省の「介護給付費分科会」では議論を進めていて、9日、報告書の最終案が了承されました。
この中では、介護現場で深刻な人手不足を解消するため、月給がほかの業種に比べて8万円余り低いとされる介護職員について、非正規から正規の職員に転換するなど処遇を改善した事業者を対象に報酬を上乗せするとしています。
厚生労働省はこうした対策で月給を1万円程度引き上げたいとしています。
また、増え続ける認知症などの高齢者を支えるため病院や介護施設の整備だけでは限界があるとして、在宅での介護サービスを強化するとしています。
具体的には、デイサービスや一時的な宿泊など複数のサービスを提供する「小規模多機能型サービス」や看護師やヘルパーが必要な時に自宅を訪問する「定期巡回・随時対応サービス」などを手厚く評価するとしています。
一方で、特別養護老人ホームについては、収入から支出を差し引いた収益率が平均で8.7%と、一般の中小企業を上回っていることから、一定程度、引き下げるとしています。
介護報酬の全体の改定率は、今後行われる麻生副総理兼財務大臣と塩崎厚生労働大臣の閣僚折衝で決められる見通しで、厚生労働省は全体の改定率と報告書の内容を踏まえてサービスごとの報酬額を来月までにまとめることにしています。

「十分なサービス提供できなくなるおそれ」と懸念も

ことし春の介護報酬の見直しで特別養護老人ホームの報酬額を一定程度引き下げる方針がまとまったことについて、施設からは「利用者に十分なサービスを提供できなくなるおそれがある」と懸念の声が上がっています。
東京都内の特別養護老人ホームでは、去年の秋から、高齢者を一時的に受け入れる「ショートステイ」のサービスを休止しています。
サービスを提供するために十分な職員が確保できなくなったからです。
通常のサービスに加えて、ショートステイのサービスを提供するには常勤の職員が25人ほど必要ですが、現在は21人にとどまっています。
介護の仕事は負担が重い一方で、月給はほかの業種に比べて8万円余り低いとされ、この施設でも1年間で10人以上の職員が職場を去り、今月も2人が退職する予定です。
東京都社会福祉協議会が先月、都内の特別養護老人ホームを対象に調査したところ、全体の半数近い140余りの施設で十分な職員が確保できておらず、このうち、9つの施設では入所者の受け入れを制限し、また、ショートステイを休止したり制限したりしている施設も9つあるということです。
介護報酬の見直しでは、職員の処遇を改善した事業者には報酬が上乗せされる見通しですが、特別養護老人ホームの職員は「特養の報酬が引き下げられたら処遇を改善することは難しくさらに深刻な事態になる。利用者に十分なサービスを提供できなくなるおそれがある」と話しています。

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