見切り発車、ネコ耳ヘッドフォン「Axent Wear」の"一般販売"のカラクリ 出荷予定日も輸入業者の推測に基づくものであることが判明
2015.01.09 22:18ネコ耳ヘッドフォン「Axent Wear」の"一般販売"に対して高まった期待は、脆くも崩れ去りました。"一般販売"そのものが砂上の楼閣であり、例えて言えば、ある輸入業者による「iPhone 6sを2015年9月(予定)に一般販売」との発表に対してユーザーが歓喜しているような状況になっているためです。
関連:猫耳がスピーカーになるヘッドフォン「Axent Wear」、Kickstarterに登場へ(2014/6/28)
米Axent Wearは一般販売すると発表していない
昨日から、ネコ耳型スピーカーを搭載したヘッドフォン「Axent Wear」が"一般販売"されるとしてTwitterを中心に話題を呼んでいます。多数のウェブメディアがAxent Wearの"一般販売"と予約受付開始を報じており、リツイート数が1万回前後に達する記事も見受けられます。
ネコ耳ヘッドフォン“AXENT WEAR”の一般販売が決定! 本日1月8日より予約受付がスタート! http://t.co/7mUFcULc9E pic.twitter.com/ucPZz8XWsj
— ファミ通.com (@famitsu) 2015, 1月 8
しかし、これらの情報は読者を誤解させるものとなっています。なぜなら、米Axent Wearは、クラウドファンディングサイト「Indiegogo」外での「Axent Wear」一般販売に関する具体的な情報を発表していないからです。独自ショップで販売することを予定していたものの、現段階では一般販売の具体的な日程の決定はなされていないものと思われます。
そもそも、同ヘッドフォンは、昨年10月に「Indiegogo」で200万ドル以上の資金調達に成功しましたが、11月25日に製造工場の選定が難航していることを発表。12月17日には、新機能の追加と製品の品質向上のために出荷が遅延することを明らかにしており、その後は情報が更新されていません。つまり、2015年1月8日時点では、当初2015年4月を予定していた出荷は、達成困難な状況となっているということです。どの程度の遅れが出るかは、今のところ不明です。
ちなみに、クラウドファンディングの性質上、製品が開発段階で計画が頓挫したり、目標品質を達成できなかったり、支援者向けに出荷する日程が大幅に遅延したりすることは珍しくなく、そのリスクは支援者が負うケースが一般的です。
「Axent Wear」出荷予定日は推測に基づく
今回、「Axent Wear」の"一般販売"をおこなうと発表したのは、ドゥモア・ショップをカラーミーショップ(GMOペパボ運営)上で展開している株式会社ドゥモア。同社発表のプレスリリースやショップ内の説明には「並行輸入」による販売であると明記されており、(ドゥモア・ショップからの)出荷予定日は「2015年9月」とされています。プレスリリースには「クラウドファンディングサービス後の一般販売分の予約注文の受付を開始」すると記載されています(ショップ内には説明なし)。
※並行輸入とは、正規代理店ではない事業者が、独自に製品を調達して輸入すること。
「Axent Wear」に関して言えば、米Axent Wearもしくは正規代理店がIndiegogoの支援者以外にも広く販売することを「一般販売」と呼ぶのが妥当だと思われますが、公式には発売が未確定である「クラウドファンディングサービス後の一般販売分」の製品を並行輸入して国内の一般消費者向けに販売することを「一般販売」とするのは、消費者を誤解させる表現になっています。この表現が許されるならば、冒頭で挙げたiPhone 6sの一般発売に関する発表も同様に許される可能性が高いと言えるでしょう。
実際にウェブメディアの中には米Axent Wearが一般販売を開始すると報じている媒体もあり、Twitterをチェックした限りでは同様に認識しているユーザーが多数にのぼるようです。筆者も、ドゥモア社によるプレスリリースのタイトル『ネコ耳ヘッドフォン「AXENT WEAR」を一般販売』を見たときに、米Axent Wearによる一般販売もしくは正規代理店による輸入販売が開始されるものと勘違いしそうになりました。
また、仮に一般販売されるか否かが不透明である製品の並行輸入・販売が「一般販売」に該当するとしても、出荷日未定の製品の出荷予定日を「2015年9月」とされている根拠が不明です。
そこで、ドゥモア社に出荷予定日を「2015年9月」としていることの根拠を尋ねたところ、担当者から「出荷予定日は推測に基づいています。普通、Axent Wearのような製品であれば3か月程度あれば開発・製造が可能であると考えられるため、2015年9月までには出荷できるのではないでしょうか」との回答を得られました。「Axent Wear」の開発・製造が失敗し出荷がなされなかった場合の返金対応については、「その時にならないと分かりませんが、当社に責任があり、返金対応を実施すると思います」(担当者)とのことでした。
米Axent Wearに問い合わせていますが、回答が届き次第、追記します。