プレゼンテーションが苦手とされる日本人。世界的ベストセラー『プレゼンテーションZEN』の著者、Garr Reynolds(ガー・レイノルズ)氏がプレゼン上達のコツを簡潔に紹介します。説得よりも物語を重視する、驚きのプレゼン術とは?(TEDxKyoto2014より)
【スピーカー】
プレゼンテーションの権威 Garr Reynolds(ガー・レイノルズ) 氏
【動画もぜひご覧ください!】
Why storytelling matters | Garr Reynolds | TEDxKyoto
プレゼンスキルを高める10の方法
ガー・レイノルズ氏:今日はプレゼンテーションを良くするための10個の方法をお教えしようと思います。物語を語る人たちとの関わりの中から、長い時間をかけて私が身につけてきたものです。
私の仕事は世界中をまわって、プレゼンテーションする人たちを助けることです。特にビジネス分野が多く、宣伝の文言やアイディアを教えたりもしています。その際には顧客に対して、プレゼンテーションに物語を入れて話せと伝えています。
しかしご存知だと思いますが、下手なプレゼンテーションも多く見受けられます。世界中には数えきれないほどの退屈なプレゼンテーションがあるのです。会場にいらっしゃる皆さんの中に退屈なプレゼンテーションを見たことがある方はいらっしゃいますか?
今、話をしている私のことは言わないでくださいね(笑)。
(会場笑)
ところで、過去を調べなおすことで新しい知恵を得られるという考え方があります。
絵を使ったコミュニケーションから得られる教訓とは
例えば絵を使ったコミュニケーションにはたくさんの教訓があります。過去を調べなおすことで新しい知恵が得られるんです。
絵を使ったコミュニケーションについては、ここ京都で2年前にもお話しました。紙芝居についてです。ひとつの例ですが、とても分かりやすい絵を使ったコミュニケーションの方法ですよね。多分、元を辿れば日本の絵画形式である絵巻物なのでしょう。
紙芝居は1920年代、30年代、40年代と、とても人気がありました。物語を話す人がいて、内容に沿った絵があったのでお客さんは理解しやすかったのです。この形式がお客さんの興味をひき、お客と紙芝居、物語を話す紙芝居屋の3つが上手くバランスをとっていたのです。
今の時代のプレゼンテーションも、そうあるべきです。人間が文字を読めるようになる前から、物語を語ることは私たち人間のDNAの一部分でした。私たちは物語を語り、子供たちも書いたり読んだりする前に、物語から学ぶのです。
私たちは物語ることで人生の教訓を共有してきました。説明的な話にも物語の要素が使われています。どんな種類の語り口にもいくつもの物語が含まれているのです。これは私たちの話をスムーズに進め、もちろんドラマ性も高めますね。
プレゼンの極意はピクサー映画から学んだ
私たちは出来ることならプレゼンテーションにドラマの要素を少し加えるのを好みます。ちなみに私と私の家族は奈良に住んでいて、ここから通り沿いに少し行った所です。私たち家族のプロジェクトの1つが、2人の小さな子供を育てることです。
私は、いわゆる日本でいうところのイクメン(育児を積極的にする男性)なんです。
(会場笑)
私の役割は子供たちの学校への送り迎えで、出来るだけ彼らの人生にとって大きな役割を果たそうと心がけています。ところで、人生経験が豊富な先輩は子どもと一緒にテレビを見ないほうが良いと言いますが、私たち家族は、テレビは見ないもののたくさんのDVDを英語で見ます。一石二鳥ですね。エンターテインメントを楽しむのと同時に英語の勉強にもなります。今までのピクサー映画を、繰り返し、繰り返し見ています。
だから、今日お話する内容なのですが、プレゼンテーションを良くするための10個の方法ではなく、たくさんピクサーの映画を見て学んだこと、とタイトルをつければ良かったかもしれません。
(会場笑)
優れたアイデアは、どこからやってくるのか
さて、本題に入りましょう。最初の1つめです。本日皆さんがご覧になるプレゼンターも以前にTEDxKyotoに出演した方も全員がすばらしかったでしょう。彼らは映像などのテクロノジーは使いますが、コンピュータの電源は切ります。彼らは知っているからです。
ジョン・クリーズが言うように、私たちはどこから優れたアイディアが来るのかを知ることは出来ませんが、ラップトップのコンピュータから来ないというのは良く知っています。
だから準備段階においては、スマートフォンや全てのコンピュータの電源を切りましょう。これが鍵です。コンピュータを使う所から始めないでください。
Googleや、私が何年も前に働いていたAppleなど技術がある会社では、いたるところに紙やホワイトボードがありますよ。紙はとても便利なんです。アイディアを書き留めるための付箋とかですね。
紙にアイディアを書き留めて、その後、コンピュータが使いたいなら使えば良いんです。私の生徒がこれを送ってくれました。
(会場笑)
今までで最高のWindowsの使い方かもしれません。なんて冗談です(笑)。ビル・ゲイツは好きですよ(笑)。
「話し手の物語=聞き手の物語」であることが理想
さてと、2つめの方法にいきましょう。観客が一番重要ということです。
私はこれをいつも言います。自分の話をして、観客と通じ合うにはどうすればいいか、と皆さん私に尋ねます。覚えておいて欲しいのは、もし正しいアプローチがあるならば、話し手の物語は聞き手である観客の物語でもあるのです。
話し手が語る物語や出来事の詳細は、話し手だけに起こったことでしょうが、テーマとしては普遍的な物で関係性があるのです。例を1つ出しましょう。ピクサーのアンドリュー・スタントンは『ファインディング・ニモ』の脚本と監督、他にも多数の作品を手掛けています。
どのようなタイプの話であっても、観客を大事にする必要がある、と彼はTEDで話していました。
彼が言うように私が観客を意識して情熱的に、知的に、美しさを持って話す。そうすれば良いプレゼンテーションが出来るのに間違いはないです。準備段階で観客に対して共感を示すことが出来れば違いを生み出すことができます。
プレゼンにとって大切なのは建築的な構成
次は3つめの方法です。しっかりと構成すること。
私の好きな映画監督のビリー・ワイルダーは言いました。物語は建築的な構成を持っていなくてはいけない、と。しかし、構成は映画を見た時には観客に忘れられて消えてしまう物です。
これはプレゼンテーションに関しても同じことが言えますね。構成はあるのに観客は気づいています。聞いていて理解もしています。話し手のトークに集中しているわけです。物語の基本的な形は始まりがあり、中盤部分があります。
そして最後に、終わりがあります。これは便利な構成です。ダックスフントも頭の部分があり、体の部分があり、そしてお尻の部分がありますよね。
非常に便利という訳ではないですけど確かにそれらしくはなります。序の部分で解説をし、未解決のテーマやリスクについて話をします。中盤では問題やテーマなどを対立させて緊張感をあおります。そして最後に解決策などを提案。シンプルですが良い構成です。
ビジネスで現在よく使われていて私が使う構成の1つですが、解決策を集中的に伝えます。なぜなら問題を解決する為に会社はアイディアや製品を売っていますからね。
さて、この表は私が大学の起業の授業で使う教材の1つです。これを私は最初に生徒たちに使わせます。理想的な世界と現実の世界の対立について考えさせる為に使うのです。私たちが過ごしている現実世界で何が問題を引き起こすのか。その為の解決策を考えさせています。
良いアイディアだと思います。生徒はホワイトボードに書いた紙を貼って他の生徒に見せます。
紙に書かれたアイディアについて質問をしながら磨きをかけ、そして出来たアイディアを更に書き留めます。
その後に先ほどの表に戻ってプレゼンテーションの構成に関するアイディアのプランを練ります。
この表を観客は知ることがなく、シンプルな物ですが、起業を目指す生徒にとってはアイディアを書き留めておけますし、便利なものです。
優れたプレゼンは共感を呼ぶ
次の4つめの方法ですが、明確なテーマを持つことです。
テーマというのは何が重要かを意味します。何が重要だったのか、テーマが良く分からないプレゼンテーションを見たことはありますか? ここには誰もいらっしゃらないと良いですが、何をプレゼンテーションで言いたいのか、わからないものもあります。ここに例を出しましょう。
彼女の名前はメグミ。映画監督をしています。昨年、ここでスピーカーとして登壇しましたね。まだ見てないなら見て下さい。
そしてもうひとりは私の友人であるパトリック・リネハンです。現在はロサンゼルスにある大学のUSCで教鞭をとっています。
メグミとパトリック、その2人のプレゼンテーションは本当にすばらしかったのですが、物語は異なるものでした。若い女性の映画監督は日本とアメリカのハーフとして育った生い立ちについて話をしました。
一方、パトリックはゲイの男性とはどういう存在か、秘密を隠して生きてきて、カミングアウトをし、結婚もして、人生をオープンに出来るようになった彼の変化についての話をしました。全く両者は異なるテーマですし、物語も独自のものです。しかし2人に共通する部分があります。
それは世間との差異について話をしたということ。両者の話は共感を呼びました。観客の大部分はハーフでもなければ、ゲイでもないかもしれない。しかし、安心して生活できるように戦っているという意味では観客とも関係しています。普遍的なテーマの1つなのです。
つまり話し手の物語は観客の物語に違いないのです。この方法でアプローチをすれば、他の話し手との違いを生み出せます。
チェーホフの銃のルール
さて5つ目の方法です。不必要な部分は省くこと。
もし映画の脚本を書いたり、劇作家であるならば、チェーホフの銃のルールについて知っているでしょう。こういうルールです。物語に無関係な全ての要素を省くこと。チェーホフは言います。
「最初の章で壁にライフルがかけてあると書いたなら、2章か3章でライフルから弾が発射されないといけない」
要するに余計な要素をプレゼンテーションに混ぜてはいけないのです。構成の全てに意味があります。
登場シーンでもひと工夫を
次は6つめの方法です。早めに観客の心をとらえること。
ジョージ・タケイさんも春に登壇しましたよね。彼のプレゼンテーションは好きでしたか? 何人くらい見たのでしょう? 見れたのならすばらしいですね。彼はここにありふれた方法で登場しませんでした。
ありがとうと挨拶をしたり、両親や大統領に感謝の言葉を述べたわけではない。こういう風に自然にプレゼンテーションを始めました。私は宇宙船エンタープライズ号の元隊員です、と。
20分間のプレゼンテーションの一番初めで、すぐに観客の心をつかみました。すばらしいです。場を和やかにするための導入部分があり、すばらしい物語と旅のような人生についての話を進めました。好例の1つだと思います。
登場人物、葛藤、ゴール
次は7つめの方法です。葛藤しているポイントをはっきりとさせる。
どこが問題点なのか。物語の効用を科学的に論じた『Story Proof』というタイトルの本があります。
作者が論じるところによると、登場人物が障害を克服するための葛藤を描くこと。そしてゴールへと到達すること。それが物語である。鍵となるのは、登場人物、葛藤、ゴールに到達するために障害を克服すること。
もう一度いいます。登場人物、葛藤、障害、ゴール。ここで、次の3つについて考えてみます。登場人物、葛藤、ゴール。こういう風に表すことが出来ます。
この絵を許して下さい。4歳の子どもが手伝ってくれました。
こうやって登場人物が歩いていくとします。すると障害物が現れます。突然、壁に出くわすのです。彼は壁を乗り越えようとしますが、上手くいきません。ビジネスにおいて私たちは彼を助けようと解決策を提案します。
言わば、ロープを投げてあげるわけです。
登場人物は壁をよじ登ろうとしますが、さっきより上手くいきそうです。よじ登ろうとして物語の緊張感は高まっていきます。壁をよじ登れるだろうか? うまくいくだろうか?
壁を乗り越えられた!
乗り越えたことで彼は成長しているのです。この物語の構成はいろいろなプレゼンテーションに応用することが出来ます。登場人物の性格についてあなたは考えていますよね。私には容易に想像できます。登場人物、葛藤、ゴール、です。
ビフォーアフターの変化が明確であること
次は8つめの方法です。明確な変化を提示すること。
もう一度、良い例を出します。昨年、自身のすばらしいプロジェクトについて話をしたアレックス・カー。
1年間で築300年の家屋や更に古い家々をリフォームしたのです。良い例だと思います。リフォーム前後を見せるので以前の家が古くて役に立たなかったのが一目瞭然ですね。見せることで観客にはっきりと、わからせます。
知識としてわかるだけではなく、目でみてわかりますからね。これがリフォーム前。
これがリフォーム後。
変化が明確です。もちろん私たちの人生も変化しています。常に変化を繰り返しています。同じ状態ではないのです。このステージにあがる時や、講義をしたり、プレゼンテーションをする時はいつでも私たちはある種の変化について話をするのです。
変化について話をしないのであれば、こういう風にステージにあがる意味はないかもしれません。
誰もが予想しえない展開を
次が9個目になります。予想出来ないことをする。
これは私が推薦している本です。日本語版もあります。観客の心にプレゼンテーションを留めておく方法の1つは予想できない展開を起こすことです。『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を覚えていますか?
だいぶ前なのでリアルタイムでは見てないかもしれないですね。ビデオが出る前の話かも。衝撃的なダース・ベイダーのセリフを思い出して下さい。
「違う。私がお前の父親だ」
何が起こったのかと見た時に思われたでしょう。インターネットで見たかもしれませんね。猫が初めて映画を見たらこうなるでしょう。
あまりにも衝撃的です。
(会場笑)
観客を、この猫のような状態にする為に、あなたは何をすればいいでしょう。どうにかして予想できない展開を用意しておく必要があります。
笑うことのなかったナナちゃんに起こった変化
10個目。観客の感情に訴えかけること。
データや具体的な証明による説得も必要ですが大概はそれだけでは不十分です。また1つ例を出しましょう。ステファン・デニングによって書かれた本をお勧めしたいです。彼は世界銀行で長いキャリアを持っていて、とても分析に優れた左脳タイプの人です。
彼はこう言っています。あなたがアイディアによって、他人を興奮させたり実際の行動を変えさせるための唯一の方法は物語を通して語ることだ、と。
もちろんデータや具体的な証明も必要ですが、それだけではうまくいきません。この写真に写っているジョン・ギャスライトさんは昨年の最後のスピーカーでしたね。
心や体に重い障がいを持つ子どもたちを助けるすばらしいプロジェクトを行っています。子どもたちを木の上に連れていってあげるプロジェクトで、時にはものすごく高い木の場合もあります。
彼はプレゼンテーションで樹木が肉体的にも精神的にも癒しの効果があるというデータや具体的な証明を使っていますが、例えばナナちゃんの場合です。彼女は顔の表情をコントロールできずに笑ったことがありません。
木に登れるかどうかも分からなかったのです。ジョンはこの話をこの写真と一緒に話しました。ナナちゃんが木の上に行けた時、彼女に変化がありました。笑ったのです。
ジョンは続けて言いました。ナナちゃんのお母さんも、娘が笑った顔を見たことがなかった、と。
ジョンはデータも見せましたが、ナナちゃんに起こった変化を写真でも見せたというわけです。
会場には泣いている観客がたくさんいらっしゃいました。恐らく長い間、このプレゼンテーションを忘れないでしょう。
自分の弱さをステージ上でさらけ出せるか
10個の方法と最初に言いましたが、もう1つだけあります。11個目の方法です。嘘のない自分であること。
嘘がない自分でいるにはどうすればいいかと、みんな言います。魔法のようなことだと。嘘がない自分とは、自分自身の弱さを許容できている状態です。
その為にリスクを冒す必要がありますが、日本の学校制度ですと、これはあまり勧められている考え方ではないでしょう。しかし過去に登壇された優れた日本人スピーカーたちは正直に自分の弱さをステージ上で見せられる人たちでした。
さて、ここで質問です。あなたの物語は何ですか? 世界中がこの質問の答えを聞くのを待っています。
今日1日が良い日でありますように。来年もまたこのステージでお会いできるのを楽しみにしています。ありがとうございました。
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