東大病院と富士フイルム、移植用組織を短時間で量産 感染症低減の新技術
SankeiBiz 1月3日(土)8時15分配信
東京大学医学部付属病院と富士フイルムなどが、立体の造形物を簡単に作製できる3Dプリンターと遺伝子工学を駆使し、人体に移植できる皮膚や骨、関節などを短時間で量産する技術を確立したことが2日、分かった。移植の難題となっている感染症の危険性を低く抑えられるのが特長。世界初の技術といい、5年後の実用化を目指している。
開発したのは、東大病院顎口腔(がくこうくう)外科の高戸毅教授らの研究チーム。肝臓など臓器にも応用する考えで、体外で生成した健康な組織を患部に移植する「再生医療」を大きく前進させる可能性がある。
高戸教授によると、病気やけがで皮膚、骨、軟骨、関節の移植が必要な患者は国内で計2000万人以上。現在は患者本人の患部以外から切除した組織を使うなどしており、体への負担が大きい。
患者の負担を減らす方法として、国内ではウシなど動物の組織とプラスチック素材を主な原料に3Dプリンターで移植用組織を作る技術がある。ただ感染症のリスクがあり、組織が人体になじむ「同化」に2〜3年はかかる。頭蓋骨や大腿骨(だいたいこつ)といった強度の必要な組織の作製も難しいという。
研究チームは今回、皮膚や軟骨、骨などの基本構造の7割以上が、タンパク質の一種であるコラーゲンでできていることに着目。富士フイルムが遺伝子工学を駆使して開発したヒトのコラーゲン「リコンビナントペプチド(RCP)」を活用することで、感染症リスクの低減に成功した。
RCPに患者本人から取り出した幹細胞や細胞の増殖を活性化させるタンパク質「成長因子」などを混ぜて医療用に改良した3Dプリンターに装填(そうてん)。CT(コンピューター断層撮影装置)で得た体内組織のデータを活用して2〜3時間で作製する。患者ごとに違った形、大きさにすることも可能という。
高戸教授は「感染症リスクの低下だけでなく、数カ月間での自然同化も可能」と説明する。動物実験では良好な結果が出始めているという。厚生労働省から必要な許認可を得た上で、5年後の実用化を目指す。
再生医療に詳しい埼玉医科大学形成外科・美容外科の中塚貴志教授は、今回の技術開発について「3Dプリンターが、再生医療に欠かせない医療機器に進化するための重要なステップになる」と話している。
最終更新:1月3日(土)8時22分
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