■1月9日
「清廉」とは心が清くて私欲のないこと、と広辞苑にある。いまの日本にそんな人物がどれほどいるのか。まして「高度の清廉性」を持った人など絶滅に近いだろう。ホステスのアルバイト歴を理由に日本テレビのアナウンサー職の内定を取り消された東洋英和女学院大4年の笹崎里菜さんは、「高度な清廉性」とやらにひっかかった。
それが一転してアナウンサーとして入社できることになった。地位確認を求めた民事訴訟で8日、東京地裁が和解を勧告し双方が受け入れ「アナウンス部配属予定の総合職」として日テレが4月に採用するという。争点の「清廉性」について明らかにされないままの早期決着だった。
「採用内定は法的に保護され、よほどの理由がないと取り消すことはできず日テレは分が悪すぎた。懐の深さを見せることでよしとしたのだろう」と関係者。2014年の年間視聴率で3年ぶりにゴールデン、プライム、全日の3冠奪回が発表されたばかりでもあり、王道を歩んでいく上でミソをつけたくなかったのかもしれない。
それはともかく、アナウンサーに必要な「清廉性」とは一体何なのか。日テレのアナウンサーを目指す大学生にとっては、世の中を知る上でアルバイトは経験しておくに越したことはないが、どこまでがよくて何をしたらひっかかるのか、具体的に説明してもらわないことには混乱するのではないか。
晴れて女子アナとなる笹崎さんは入社前から裁判という荒波にも揉まれた。報道の一翼を担う職業として貴重な経験になったろう。後は本人の努力次第。「清廉性」はともかく、「清潔感」がにじみ出るような女子アナに成長してもらいたいものだ。 (今村忠)
(紙面から)