緊急輸入では焼け石に水、
バター不足解消には構造的変革が必要

酪農家も牛も減っている

2015.01.09(Fri) 白田 茜
筆者プロフィール&コラム概要
バターは品切れ状態。棚には「お一人様一点限り」の張り紙が(都内のスーパーにて)
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 バター不足が深刻化している。スーパーでは品薄状態が続き、「お一人様一点限り」としながらも、入荷するとすぐ売り切れてしまう状況だ。政府はバター不足解消のために海外から緊急輸入したが、店頭でのバター不足は改善していない。バター不足の背景を探りつつ、今後の対応策について考えてみたい。

生乳使用製品の中でバターの生産減少が顕著

 深刻なバター不足になってしまったのは、酪農家の廃業が相次ぎ、国内で飼育している乳牛頭数が減ってしまったこと、2013年の猛暑の影響で乳牛の多くが乳房炎にかかってしまい、生乳(せいにゅう:搾ったままの牛の乳)の生産量が減少したことなどが原因である。

 農林水産省の「最近の牛乳乳製品をめぐる情勢について」によると、乳用牛を飼育する酪農家数は、2014年は前年比4.1%の減少。原料の生乳を生産するためのコストも、配合飼料などが上昇したため高騰傾向にあるという。

 生乳の生産量は1997年以降、減少傾向にある。

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白田 茜 Akane Shirota

1978年佐賀県生まれ。佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。


食の安全に対して国民の関心が高まっている。国民が健康を意識しているのはもちろんだが、今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。このコラムでは、日本や世界における食の安全への取り組みを様々な角度から取り上げていく。