訃報:金子一士さん89歳=広島県原爆被害者団体協理事長

毎日新聞 2015年01月08日 20時32分(最終更新 01月08日 21時29分)

 広島原爆の被爆者で核廃絶運動に尽力した広島県原爆被害者団体協議会理事長の金子一士(かねこ・かずし)さんが4日、肺炎と急性心不全のため広島市の病院で亡くなった。89歳。葬儀は近親者で営んだ。被団協が近く追悼の会を開く。

 広島県出身。1945年8月6日の原爆投下の3日後、19歳の時に被爆者の救援に来た医師らを案内して広島市内に入り、被爆した。翌年教員になり、86年に中学校長を最後に退職。88年に県被団協に入った。

 副理事長を経て93年、理事長に就任。被爆の実相を伝えようと、修学旅行生らに被爆体験を語る活動を続けた。一方、核実験の度に広島市中区の原爆慰霊碑前で抗議の座り込みをした。被爆者代表として原爆症認定問題にも取り組んだ。

 県被団協は、旧ソ連などの核実験への対応を巡って64年、当時の社会党系と共産党系に分裂した。金子さんは共産党系で、もう一つの県被団協理事長の坪井直(すなお)さん(89)とともに統一を思い描いていたが、かなわなかった。坪井さんは「2世への運動や体験の継承を含めて将来何かやろうということばかり考えていた。被爆70年を機に『もう一緒になってやろう』と伝える腹じゃったのに。残念無念でならない」と話した。【加藤小夜、高橋咲子】

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