仏週刊紙テロ:イスラム過激派が賛美 シリアは強く非難

毎日新聞 2015年01月09日 12時30分

 【ヨハネスブルク服部正法、カイロ秋山信一】仏週刊紙「シャルリーエブド」が襲撃され12人が殺害された事件に関し、イスラム過激派が実行犯を相次いで賛美した。一方でシリア政府は強く非難した。

 シリアとイラクで拡大するイスラム過激派組織「イスラム国」のラジオ放送アルバヤンは、仏週刊紙襲撃事件を「英雄が預言者の恨みを晴らすために12人を殺害した」と称賛する声明を発表した。AFP通信が8日伝えた。

 また、国際テロ組織アルカイダの北・西アフリカ分派「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」も実行犯をツイッター上で「真実の騎士」と呼んでたたえた。米国のイスラム過激派監視団体が8日伝えた。

 仏メディアによると、犯人は現場で「イエメンのアルカイダ」を名乗った。アルカイダの分派「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」を指しているとも推測されるが、事実関係はいまのところ不明。AQIM、AQAPはともにアルカイダの中枢に従う組織で、「兄弟」組織とも言える関係。

 AQIMの源流は、アルジェリア政府と1990年代に戦ったイスラム原理主義者。アルジェリア政府に追われて西アフリカ・マリに流入し、やがてアルカイダに合流。2012年には他の過激派などとともにマリ北部を占領し、13年1月の仏軍介入で放逐され、リビアなどに潜伏している。

 一方、シリア外務省は8日、週刊紙襲撃事件を強く非難する声明を発表した。声明では「シリア政府は、シリアでテロリストを支援すれば、やがて支援国にもテロの矛先が向くと繰り返し警告してきた」と指摘。アサド政権はイスラム過激派を含むすべての反体制武装勢力を「テロリスト」と位置付けており、今回の事件はフランスが反体制派を支援し、内戦に関与してきたことが遠因だとの見方を示した。

 シリア外務省は「(事件で)欧州の対シリア政策の欠陥が明白になった。テロの拡大を食い止めるための真剣な協力体制の構築が必要だ」と指摘。米欧諸国に対してアサド政権との協調に政策を転換するよう促した。

 声明は、襲撃事件とシリア内戦を関連づける根拠を明らかにしていない。ただ過激派の動向に詳しい専門家には、犯人がシリアのイスラム過激派から軍事訓練を受けた可能性を指摘する声もある。

 フランスはシリアの旧宗主国で、内戦発生当初から反体制派を積極的に支援。和平の前提として、アサド大統領の退陣を要求している。

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