北海道新幹線の札幌延伸が当初計画より5年前倒しとなり、2030年度とする方針が8日決まった。およそ15年で札幌―新函館北斗間に1兆6700億円の工費を投じる。沿線の関係者からは歓迎の声が相次ぎ、経済波及効果は開業初年度だけで1割近く高まるとの試算もある。工期短縮により自治体の年度ごとの財政負担は高まるが、それを超えるだけの効果を引き出せるかが重要になる。
北海道新幹線は新函館北斗―新青森が16年3月に開業する。札幌―新函館北斗はそれから15年後の開業となる。北海道旅客鉄道(JR北海道)は同日、「札幌延伸がより現実的になり、様々な取り組みが具体化して北海道経済によい効果が生じると期待する」とのコメントを出した。
札幌―東京は約5時間となり、現在よりも4時間ほど短縮される。道内でも札幌―函館が現在は3時間40分ほどかかっているが、札幌―新函館北斗が約1時間と日帰り圏になる。
足元では資材の高騰や建設業界の人手不足などで工事単価は上昇している。だが、札幌―新函館北斗に投じる工費は従来計画を据え置く。
総額は変わらないが、工期短縮により地元自治体の単年度の負担は高まる。北陸、九州の両新幹線をあわせて工期前倒しには5400億円が必要だ。現状の負担割合から単純計算すると、道内では年に10億円あまりが追加で必要となる。
地元からは歓迎の声が目立つ。北海道商工会議所連合会の高向巌会頭は「足元では公共工事が増え、将来でも観光を基点とした展望が開ける」と声を弾ませる。不動産や食品などにも新たな動きがでると見込む。
停車駅ができる倶知安町の福島世二町長も「本州や新千歳空港からのアクセスが良くなり、ニセコ地区のスキー客をはじめ観光客がますます増える」と喜ぶ。「駅前の再開発や二次交通の確保などの検討を加速しなければならない」と話す。
札幌延伸は東京と高速鉄道網で結ばれるだけではなく、その間の東北などと道内を結ぶ意味でも効果が大きい。北海道経済連合会の大内全会長は「北海道と東北がひとつの経済圏となり、道内でもニセコと札幌が30分ほどで結ばれ、北海道の魅力が一層高まる」と期待する。
また、函館国際観光コンベンション協会(函館市)の藤森和男専務理事は「札幌圏がぐっと近くなり、長旅を敬遠した人たちの需要を掘り起こせる」と歓迎する。
道庁は「利用者の増加により道内への経済波及効果も大きくなる」(新幹線推進室)と期待を示す。ただ、整備費の負担は小さくない。北海道新幹線の工事に着工した05年度から13年度までの累計で、道庁は起債を含めて約790億円を負担した。このため「国の財源措置の拡充によりできるだけ地方負担を軽減してほしい」と求めている。
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