ついに50歳になる。ドラゴンズの山本昌は今年も現役として、プロ32年目のシーズンを迎えた。
「18歳の時には、50歳まで野球をやるなんて夢にも思ってなかった。3年やってダメなら大学行って、教師になろうと思ってましたし……そんな僕がこの歳までプロ野球選手ですから、ホント、奇跡ですよ。それにしても最近、こうして昔を振り返ることが増えましたね(笑)」
去年の9月5日、ナゴヤドームでのタイガース戦に49歳25日で先発した山本昌は、5回を無失点に抑えて勝利投手となった。この1勝で、彼は浜崎真二(ブレーブス)の持っていた最年長勝利のプロ野球記録を64年ぶりに更新、今年はジェイミー・モイヤー(ロッキーズ)の持つ49歳5カ月という世界最年長勝利の記録に挑むことになる。
「落合(博満)GMからは50歳までやれと言って頂きましたけど、もし去年、あの初登板の試合に勝てずに“1試合、0勝1敗”という成績で終わってたら、僕は辞めていました。だからこうして今、ジャージを着て練習できるというのは、あの1勝のご褒美でもあると思ってます」
「僕“オタク系プロ野球選手”ですからね」
去年の1勝で今年もユニフォームを着続ける「資格を得た」と、山本昌は言った。毎年、何らかのハードルを課され、それを越えることで現役を続けられるのがプロ野球選手なら、32年目の彼は31台ものハードルを越えてきたことになる。
「プロ32年目というより、野球部生活38年目ですよ。僕、中学で野球部に入部してからずっと野球をやらせてもらっていて、一度も社会に出てない感じなんです。なんつっても、“オタク系プロ野球選手”ですからね。ラジコンにしても、クワガタやドラクエにしても、ああいう作業を通じてとことんまで追求するしつこさは、野球に役立ってると思いますよ」
己の肉体を知り尽くし、フォームを突き詰め、変えることを恐れない。山本昌は今年もまた進化を企んでいた。
「鎖骨をイメージしたピッチングっていうのかな……いや、こんな宇宙語じゃ、意味わかりませんよね(苦笑)」
鎖骨……それは見た目にわかる変化なのかと訊ねたら、「わからないでしょうね」と山本昌は笑った。そんなマニアックな進化に快感を覚えるからこそ、彼は38年も野球部員でいられるのだろう。
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