クレームストーカー:窓口女性に恋愛感情隠し接近

毎日新聞 2015年01月09日 07時00分(最終更新 01月09日 09時26分)

クレームストーカーへの対処法
クレームストーカーへの対処法

 接客や窓口業務などを担当する女性が、仕事に対する苦情を名目に客の男からつきまとわれる「クレームストーカー」の被害が増加し、企業や自治体が対応に苦慮している。ストーカー行為の疑いが濃厚だが、ストーカー規制法の構成要件である恋愛感情を隠すことで、警察への通報を避けようとする加害者もいる。専門家は「凶悪事件に発展する前に被害者を加害者から引き離し、弁護士を立てたり警察に相談したりするなど毅然(きぜん)とした対処が重要」と指摘する。【林奈緒美】

 ◇法くぐり潜在化

 全国で店舗を展開する育毛サロンの店長だった30代女性は、客の男から約7カ月にわたりつきまとわれた。最初は特別な様子はなかったが、次第にシャンプーなどの商品やサービスへのクレームを理由にしつこく面会を要求された。女性が他の業務で対応できないと「店長を出せ」などと声を荒らげることも。店側は料金を返す代わりにサロンからの退会を求めたが応じず、女性は別の店に移らざるを得なかった。

 その後、男は「精神的苦痛を受けた」として女性個人に慰謝料を求めて提訴。客とのトラブルで評判が落ちることを心配した店側が慰謝料の支払いを肩代わりし、以後つきまとい行為はなくなったという。サロンの法務担当者は「クレームは理不尽なものばかりで女性が目当てだったことは明らか。裁判を起こしたのも女性との接点を持ち続けるためだろう」とみる。

 東京都内の自治体で就労支援窓口を担当する20代の女性職員は昨年の約半年間、求職中の若い男からつきまとわれた。男は女性の名札で名前を覚え、ほぼ毎日、職場に電話してきたり窓口に何時間も居座ったりした上、「女性の態度が悪い」などと文句を言った。不在の際は「本人に謝罪させろ」などと要求。自治体側が弁護士に相談し、つきまとい行為の中止を求める文書を内容証明郵便で送ると姿を見せなくなったという。

 企業向けの危機管理コンサルタント会社「平塚エージェンシー」(東京都千代田区)には約3年前からこうした相談が毎月数件寄せられる。社長の平塚俊樹さん(46)は「男性の中には女性から丁寧に接客されると、『自分に好意がある』と勘違いする人がいる。手に入らないならいっそ相手を苦しめたいと考え、つきまとうのでは」と分析する。

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