渋谷に自動車工場は作れないけど、イーロン・マスクのような次世代の車を作りたい。

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(Pic by Flickr)

20世紀の半ばに、自動車の街として栄えたデトロイトは衰退し、今では全米で最も危険な街に成り果ててしまいましたが、イノベーションを起こし続ける都市というのは、時代と共にどんどん移り変わっていくのかもしれません。

現在、自動車業界で最も革新的な企業はどこか?と聞かれれば、日本では、トヨタという答えが返ってくるかもしれませんが、アメリカではIT界の億万長者、イーロン・マスクがCEOを務める「テスラ・モーターズ」の名前が挙がり、テスラは本社、生産工場の両方をカリフォルニア州におくことを、あくまでも重視しています。

↑イーロン・マスクの「テスラ・モーターズ」は自動車企業だが、あくまですべての中心はカリフォルニア。(Pic by Flickr)

知識と経験、そして才能にあふれた人たちが、相互に上手く混じり合うことで、機能していたデトロイトの自動車産業のエコシステムが次世代の起業家たちを生み出せなかった理由は、同業他社への転職や同業種の起業を禁止したこと、業界内でアイディアの共有ができなかったことなどが挙げられますが、現在、イノベーションの中心とも言われるシリコンバレーの文化は、それとは真逆の考え方を持っています。

↑デトロイトとは真逆の文化のシリコンバレー。(Pic by Flickr)

テスラ・モーターズのCEO、イーロン・マスクはペイパルの創業者であり、シリコンバレーの文化を一番良く理解していることや、車の自動運転化や電気自動車、そして社内のオペレーション・システムなど、車の開発にもITが深く絡んでくることが、カリフォルニアで自動車を作り続ける大きな理由のようです。

最近では、自動車大手のフォード社やGM社も、デトロイトからシリコンバレーにアイディアを探しに出ており、フォード社に勤める、Jim Buczkowski氏はスタンフォードの学生がバスに乗って、フォード社のオフィスに通う日も遠くないかもしれないと述べています。

↑自動車企業がシリコンバレーに移転してくる日も近い。(Pic by mattsilverman)

松下幸之助さんは成功した理由を問われると、よく、「運がよかったから」と答えていましたが、創業時のテスラ社も、この運をしっかりと掴んだベンチャー企業でした。

リーマンショック直後の2009年、カリフォルニア州フリーモント市にある、GMとトヨタが共同で作った生産工場が閉鎖に追いやられましたが、テスラはこの工場を復活させ、さらに関連業者のサプライチェーンも上手く取り込むことで、新しい自動車生産のエコシステムを作り上げました。

↑ITと自動車の新しいエコシステムを作り上げた。(Pic by Flickr)

また、自動車生産の最前線では、ロボットが最大限に活用され、手作業でナットをタイヤにはめるといった光景を見ることはありません。

テスラ社のノビ・ブルックリン氏は、「自動化が拡大するシリコンバレー産業が、足並みをそろえている。数学や科学の知識、そして問題解決能力を兼ね備えた人材が、シリコンバレーには数多くいますから。」と述べていますが、テスラ社がシリコンバレーで自動車を作り続けることが、いかに重要かよく分かります。

↑自動車の生産にもITの技術が最大限に活用される。(Pic by Flickr)

しかし、テスラ・モーターズがシリコンバレーに滞在する本当の理由は、テクノロジーや豊富な人材などではなく、「古い価値観とはおさらばして、世界を変えていこう。」というシリコンバレー特有の価値観にあるのかもしれません。

イーロン・マスクはテスラ社のミッションについて次のように述べています。

「テスラ社においては、地球が時代遅れの燃料とおさらばし、我々の子孫が誇りを持てる持続可能な社会をつくる、これが究極のミッション-"why"-なのだ。」

↑シリコンバレー「古い価値観とおさらばして、新しい時代を作っていこうという価値観が大事。」(Pic by Flickr)

IT企業が東京に集中する日本で、テスラ社のようなテクノロジーと自動車産業が上手くコラボレーションできる場所はどこになるのでしょうか。

IT企業が集結する渋谷に、自動車工場を作るわけにはいきませんが、地理的な配慮もふまえて、本当の意味で異業種が共創できる場所を作ることが、日本にとって長期的な突破口になるのかもしれません。

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ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。