日本を取り巻く国際環境の不透明感が強まっている。ロシアは原油安とルーブル安で苦境に立たされ、中国は景気が減速する中、習近平主席が権力闘争に突入した。そして、欧州ではギリシャ不安が再燃している。これらは安倍晋三政権にとってプラスなのか、マイナスなのか。
ギリシャのユーロ脱退で、第2のリーマンショック?
まずギリシャ情勢だ。最初に危機が起きたのは2009年10月の政権交代がきっかけだった。中道左派が政権を握ると、財政赤字のごまかしが発覚し、それまで4%程度とされた国内総生産(GDP)に比べた財政赤字は13.6%と3倍以上に膨らんだ。
緊縮財政策に反対する市民のデモが広がり、12年5月の総選挙では左翼政党が躍進したが、連立政権の樹立に失敗。翌6月の再選挙でようやく緊縮策を実行する政党が勝利して連立政権を作り、事態は落ち着いたかにみえた。
ところが昨年末、議会が大統領を選任できず、1月25日に総選挙の実施が決まった。事前の予想では、緊縮策に反対する急進左派連合(アレクシス・ツィプラス党首)が勝利する見通しが強まっている。
もしも左派が勝利すると、新政権はギリシャ債務の75%超を保有する欧州中央銀行(ECB)と欧州金融安定化基金(EFSF)、国際通貨基金(IMF)の「トロイカ体制」に対して大幅な債務減免を求めるとみられ、交渉の難航見通しが国際金融不安をかりたてているのだ。
ギリシャは欧州共通通貨、ユーロのメンバー国である。ツィプラス党首はかつてユーロ圏からの離脱をほのめかしながら、欧州連合(EU)やIMFに妥協を迫っていた。今回はユーロに残留する意向を表明している。とはいえEUの主導的地位を占め、ECBとEFSFの最大出資国でもあるドイツはギリシャがユーロを離脱する可能性を視野に入れている。
これまではギリシャの危機がイタリアやスペインなど他のユーロメンバー国にも波及する可能性があった。今回はEUの安全網が整い、ギリシャ以外の国債価格はいまのところ安定している。だからドイツには「ギリシャが出て行くなら勝手にどうぞ」という強気の姿勢がにじみ出ているのだ。
ギリシャが本当にユーロを脱退した場合、どうなるか。いまのところ「危機は他国に拡大しない」という楽観論と「第2のリーマン・ショックになる」という悲観論が交錯している。いまや19カ国に拡大したユーロ圏から脱退した前例はないだけに、金融市場も今後の展開を読み切れていないのが実情だ。
ユーロ脱退なら、ギリシャは旧通貨であるドラクマを復活する。その場合、ドラクマはユーロに比べて大幅に価値が下落するのは避けられない。そうなると当然、国内経済はいまより一層、困窮する。混乱がギリシャだけにとどまればいいが、ギリシャ国債の暴落が他国の金融機関にダメージを与える可能性は残っている。
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