全日本柔道連盟を追われた幹部が、2020年東京五輪で“最強の刺客”となって日本の前に立ちはだかる。暴力・パワハラ問題など一連の不祥事の責任を取り、一昨年8月に退職した前全柔連事務局長の村上清氏(64)が1月からイタリア代表のGM(総監督)に就任することが6日、明らかになった。村上氏はかつてフランス代表コーチとしてらつ腕を発揮し、日本をおおいに苦しめた。15年ぶりとなる指導者としての本格復帰に「やりがいは最高にある」と燃える胸中を激白した。
5年後の東京五輪に向け着々と準備を整えるニッポン柔道に思わぬニュースが飛び込んできた。
村上氏は「イタリア代表から総監督、英語で言うとGMという役割をいただきました。イタリアの柔道部門の責任者です。リオ五輪に向かって強化してほしいのと、2020年の東京五輪までやってくれないかと言われています」と明かした。すでにイタリアオリンピック委員会から招聘状が届いており、6日には都内のイタリア大使館で就労ビザの申請を済ませた。早ければ21日にも日本をたちローマに向かう。
名門・天理大出身の村上氏はフランス代表を20年間にわたり指導。1992年バルセロナ五輪では女子監督を務め、愛弟子のセシル・ノワクに秘策を授けて“YAWARAちゃん”田村(谷)亮子を撃破。金メダルを獲得した。また、2000年シドニー五輪100キロ超級決勝で篠原信一を下し、2大会連続金メダルに輝いたフランスの国民的英雄ダビド・ドイエに基礎を叩き込んだ人物としても知られる。
そんな名伯楽がなぜ、イタリアに渡るのか。きっかけは一昨年の不祥事だった。全柔連は暴力・パワハラ、助成金不正受給など相次ぐ問題発覚で、同年8月には上村春樹前会長(63=講道館館長)ら執行部が総退陣。村上氏は15年務めた全柔連を追われる形となった。
その後、縁あって日本チアリーディング協会の国際局長に就任。しかし、世界の柔道界は雌伏の時を送る村上氏を放ってはおかなかった。声をかけたのは国際柔道連盟(IJF)のマリウス・ビゼール会長(57)だ。昨年11月上旬、村上氏に電話したビゼール会長は「今、イタリア柔道連盟の会長と副会長がボクの事務所に来ている。イタリアの柔道が低迷しきって、このままいくと世界の柔道まで競争力がなくなってくる。立て直すのはあなたしかいない」と“SOS”を告げた。
村上氏によれば、GM職は男女監督の上に立つだけではなく代表、ジュニア、コーチ陣までも指導する全権を任せられる。不振に陥っているイタリア代表だが、女子は4階級で世界ランキング20位以内に選手が入っている(6日現在)。かつての隆盛を知る村上氏は「情けない話。この1年でどれだけランキングの中に入れていくか。弱いところから強くなったら『さすが村上』と言われる。やりがいは最高にある」と早くも腕をぶす。
東京五輪では母国とあいまみえることになるが、互いに切磋琢磨して「柔の道」を競い合うことが村上氏の望みだ。
「日本人と戦うより柔道同士の競争。『日本人は強いんだ』というのは終わってると思う。ボクが一番嫌なのは『柔道がJUDOに変わった』と言われること。オマエらフザけたこと言うなよと。嘉納治五郎師範は柔道を生み、5年後に世界に普及している。もっと広い目で見てほしい」
5年後に“勝者”となるのは日本か、それとも黒い目のイタリア指揮官か。ニッポン柔道の裏表を知り尽くす村上氏の存在は大きな脅威となりそうだ。
☆むらかみ・きよし=1950年7月8日生まれ。京都出身。洛南高から天理大を経て1973年にフランスに渡る。当初は道場で練習相手を務めていたものの、4年がかりで国家公務員の資格を取り、フランス代表のコーチに就任。20年間にわたり日本式の柔道を教え込み、複数の五輪金メダリストを輩出。92年バルセロナ五輪では女子監督として指揮を執った。帰国後はミキハウス柔道部コーチを5年間務め、全日本柔道連盟入り。2009年から一昨年8月まで事務局長を務めた。柔道八段。
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